講演情報

[P-049-A]BSC移行期のがん患者へのQOL改善に貢献した一例

井上 奏, 西澤 涼子 ((株)共栄堂 ホーム調剤薬局)
【目的】積極的治療の有害事象の影響が大きくなったがん患者に対する薬学ケアにより、BSC(Best Supportive Care)移行期のQOL改善に貢献できたため報告する。
【患者背景】70代男性。2型糖尿病。咽頭がん治療歴があり、その後大腸がんを発症、肝転移を有しstage4、performance status2であった。病変進行によりX年5月よりBSCとなった。
【病状推移と薬学ケア】X年1月12日、摂食不良、体重減少によるエンシュア・リキッド®処方の際、味が同じことへの懸念を聴取した為、エンシュア・H®への変更を疑義照会により提案し、採択された。同夜電話にて咽頭腫脹の相談があり、直ぐに病院へ連絡するよう指導した後、緊急入院加療となった。その後家族から食欲不振が続き飲水もあまり出来ていないことを聴取していたが4月23日、ロペラミドが処方されgrade2の下痢があることを聴取、メトホルミン1500mgが継続処方されたため過去のRMPも考慮し緊急性があると判断して医師と協議しメトホルミンは休薬となった。休薬後は吐気と下痢が改善し摂食可能となったと家族から申し出があり以降メトホルミンは中止となった。その後ロペラミド処方の際下痢はgrade1以下となりロペラミド不使用と聴取した為情報提供し、考慮されロペラミドは処方中止となった。同年5月21日受診時からBSCの方針となったが、食欲不振はgrade1に改善し、元気さが戻り、エンシュア・H®も不要となったことを聴取した。その後肝臓の病巣は拡大するも摂食に不自由なく体重も保ちPS1に改善して過ごしたが半年後、腹部疼痛によりフェンタニルテープの使用を開始し、在宅緩和ケアへ移行となった。
【考察】積極的な治療を中止する状況においては、治療の追加がQOL向上に資するとは限らず、患者の状態を客観的に把握する事が重要であることが経験できた。また、摂食についてのQOLを保つ事の重要性を目の当たりにした。この経験を患者のために生かしていきたい。