講演情報
[P-051-C]薬の副作用に関する数値情報の提供は服薬意欲を高めるか―社会規範ナッジとの併用をふまえた問題点―
○吉田 暁1, 青木 颯也1, 小山 雄大1, 堀口 真白1, 北村 哲2, 北御門 智世2, 中井 雅智2, 堀井 徳光1, 大島 新司1, 大嶋 繁1 (1.城西大学薬学部, 2.クリオネ(株))
【目的】近年、医薬品のリスクコミュニケーションの重要性が高まっている。欧米では、副作用の発生確率を数値で示すことで患者の服薬意欲が高まる可能性が指摘されているが、日本では薬剤師が副作用に関して数値情報を提供する機会は少ない。そこで本研究では、慢性疾患患者を対象に、薬局窓口で副作用の数値情報を提示した際の服薬意欲への影響を検証した。また、別研究で用いた社会規範ナッジ(「この薬を飲んでいる人はとても多いです」というフレーズ)の併用効果についても検討した。
【方法】(株)クリオネの保険薬局19店舗において、高血圧・糖尿病・脂質異常症の新規治療を開始した患者を対象とした。初回処方時の服薬指導の前後に質問紙調査を行い、数値情報の提示有無に基づいて2群に割り付けた。非提示群では副作用の初期症状のみを伝え、提示群ではその後に発生確率(例:「それらの症状が起きる可能性は1-5%未満です」)を加えた。副作用と発生確率のリストは事前に作成した。本研究は、城西大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】治療を開始した35名の患者(平均年齢62.9歳、女性15名)の回答を解析対象とした。年齢、性別、疾患の種類、健康状態を統制した重回帰分析の結果、数値情報と社会規範ナッジのいずれもが服薬意欲の向上に寄与する傾向がみられた(p<.05、p<.10)。一方で、両者を併用した場合には有意な負の交互作用も認められた(p<.10)。
【考察】数値情報と社会規範ナッジはいずれも服薬意欲を高める効果を示したが、両者を併用した場合にはその効果が減弱する傾向が認められた。これは、情報の重複やメッセージの干渉が、患者の意思決定を複雑にし、意欲をかえって抑制した可能性を示唆する。今後は、各手法の適用場面や情報の提示順序、患者の特性に応じた組み合わせのあり方について検討を深める必要がある。
【方法】(株)クリオネの保険薬局19店舗において、高血圧・糖尿病・脂質異常症の新規治療を開始した患者を対象とした。初回処方時の服薬指導の前後に質問紙調査を行い、数値情報の提示有無に基づいて2群に割り付けた。非提示群では副作用の初期症状のみを伝え、提示群ではその後に発生確率(例:「それらの症状が起きる可能性は1-5%未満です」)を加えた。副作用と発生確率のリストは事前に作成した。本研究は、城西大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】治療を開始した35名の患者(平均年齢62.9歳、女性15名)の回答を解析対象とした。年齢、性別、疾患の種類、健康状態を統制した重回帰分析の結果、数値情報と社会規範ナッジのいずれもが服薬意欲の向上に寄与する傾向がみられた(p<.05、p<.10)。一方で、両者を併用した場合には有意な負の交互作用も認められた(p<.10)。
【考察】数値情報と社会規範ナッジはいずれも服薬意欲を高める効果を示したが、両者を併用した場合にはその効果が減弱する傾向が認められた。これは、情報の重複やメッセージの干渉が、患者の意思決定を複雑にし、意欲をかえって抑制した可能性を示唆する。今後は、各手法の適用場面や情報の提示順序、患者の特性に応じた組み合わせのあり方について検討を深める必要がある。
