講演情報

[P-073-A]調剤薬局の声掛けが生み出す変化~マイナ保険証の利用促進に向けた実証研究~

田中 智絵1, 江口 めぐみ1, 岡本 純一郎1,2, 加藤 耕次1,2 (1.(株)加藤, 2.(有)リベルテ)
【目的】近年、日本におけるマイナンバーカード(マイナ保険証)の利用を促す一方で、利用率は2025年2月時点で26.62%と低迷している。加藤薬局グループ全18店舗での2025年4月時点でマイナ保険証利用率の平均値が42.8%となっている。この全国平均より高い利用率は日々の声掛けの証だが、全店舗が確実に実施できているわけではなく、店舗により利用率の差が生じている。今回の研究は、医療現場におけるマイナ保険証の受付時の声掛けが、利用率に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】本研究は、加藤薬局グループ18店舗を対象に実施した。医療機関ごとに、マイナ保険証使用の声掛けができている店舗とできていない店舗でマイナ保険証利用状況を比較した。声掛けの内容は、「マイナ保険証はお持ちですか?」という形で、受付時に行った。また、持参されなかった患者にはマイナ保険証のメリットをお伝えした上で「次回はお持ちになってください」との声掛けを行った。データは、総合ポータルサイトからメールにて送られてくる「レセプト件数利用率=利用数/外来レセプト数」から算出した。
【結果】利用患者の90%以上に声掛けを行ったグループでは、マイナ保険証の利用率が57%であることに対し、声掛けが20%未満にとどまった店舗ではマイナ保険証利用率は24%にとどまった。この結果から、声掛けが利用率向上に寄与することが示された。
【考察】今回の結果は、受付時の声掛けがマイナ保険証の利用促進に有効であることを示している。マイナ保険証の普及には利用者からの積極的な参加が不可欠であり、医療機関の役割が重要であることが再確認された。また、声掛けの内容やタイミングを工夫することで、さらなる利用促進が期待できる。一方で、声掛けを行うことがすべての利用者に通じるわけではないため、接遇の向上や情報提供の工夫も併せて進める必要がある。