講演情報

[P-076-A]薬局におけるマイナンバーカードを使った健診情報の活用状況調査

荒川 拓彌, 松橋 陽平, 杉本 圭悟 (クオール(株)薬局事業第一本部第一事業部)
【目的】薬剤の適正使用には腎機能評価が不可欠であり、特に高齢者では慢性腎臓病(CKD)の罹患率が高いため、血清クレアチニン(Cr)値の確認が重要である。近年、薬局でもマイナンバーカードを通じて特定健診情報の閲覧が可能となりつつあるが、実際にはCr値が記録されていないケースも多い。本研究では、薬局における健診データのCr値記載状況を明らかにし、腎機能把握の実用性と限界を評価することを目的とした。
【方法】北海道内の保険薬局11店舗において、2025年5月12日から18日までの間にマイナンバーカードを用いて受付を行い、特定健診情報の閲覧に同意した65歳以上の患者を対象とした。薬剤師がマイナポータルを確認し、健診情報にCr値が記載されているかを調査した。記載がある場合には、eGFRおよびCcrを計算し、腎機能の分布やCKDステージを評価した。
【結果】対象患者192名(男性88名[45.8%]、女性104名[54.2%]、平均年齢73.3)のうち、Cr値が記載されていたのは42名(21.9%)であった。Cr値記載率は男性で30.7%、女性で14.4%と性差が認められ、年齢層別では65-69歳(34.5%)と70-74歳(27.8%)で比較的高く、75歳以上では9.4%以下と低値であった。Cr値が記載されていた患者のeGFRの中央値は61.5 mL/min/1.73m2であり、CKDステージ3a以上に該当する割合は約45.2%であった。
【考察】本研究により、薬局における特定健診情報からCr値を確認できる割合は約2割にとどまり、腎機能評価の実用性には限界があることが示された。今後、健診データの記載項目の標準化や、薬局での腎機能評価体制の整備が求められる。