講演情報

[P-081-C]ガイドラインに準拠した薬剤調整によりジゴキシン中毒を回避できた心不全患者の一例

岡崎 彩音1, 今井 真穂2 (1.薬樹(株)溝の口, 2.ライフ溝口店)
【背景】高齢化の進展に伴い、入退院を繰り返す心不全患者が増加している。「薬剤師による心不全服薬管理指導の手引き(第1版)」には職種間・施設間の情報共有が求められているが、医師と薬剤師の連携は発展途上である。今回、医師と連携しガイドラインに準拠した薬剤調整を実施し、ジゴキシン中毒を回避することができた心不全患者の一例を紹介する。
【症例】80代男性、心不全ステージC、左室駆出率70%、心不全入院歴なし。長期持続性心房細動、糖尿病等の既往があり、14剤服用。心不全治療関連薬はジゴキシン0.25mg、アゾセミド30mg、サクビトリルバルサルタン200mgであった。当薬局で初回処方応需の際、ジゴキシン過量投与を疑い門前クリニック医師と面会。確認した検査値は、血清クレアチニン0.92mg/dL、ジゴキシン濃度1.8ng/mL、NT-proBNP721pg/mLであった。医師と相談の上、2週後にジゴキシン0.25mgを0.125mgへ減量し、ダパグリフロジン5mgを開始。3カ月後、ジゴキシンの中止及びカルベジロール10mgの開始。4カ月後、下肢浮腫と労作時の息切れが出現したため、電話フォローアップを開始。6カ月後、電話フォローアップにより血圧低下と頻脈の自覚を認め、カルベジロール10mgをビソプロロール2.5mgに変更する提案を行い変更となった。
【考察】JCS/JHFSガイドラインに基づき、本症例においてSGLT2阻害薬及びβ遮断薬が未導入であること、ジゴキシン過量投与の可能性があることに介入の必要があると考えた。ジゴキシンは1.5ng/mLを超えるとジギタリス中毒を引き起こす可能性がある。薬剤調整中、下肢浮腫及び軽度体重増加はあったものの、心不全の増悪なく経過した。積極的な情報収集、フォローアップ、医師との連携を通じ、安全かつ適正な薬物療法に貢献できたと考える。