講演情報

[P-082-A]心疾患の既往があるβ遮断薬服用患者の主訴を契機とし、β遮断薬の変更を処方提案したことで症状改善に至った一例

久保田 恵斗1, 上田 哲也2 (1.(株)Human リリーフ薬局 太田川店, 2.(株)Human)
【背景】現在、慢性心不全や狭心症をはじめとするさまざまな心疾患においてβ遮断薬が多用されている。心疾患に対するエビデンスが多く、本邦で使用可能なβ遮断薬としてはカルベジロールとビソプロロールが挙げられ、個々の患者の病態に合わせて薬剤が選択されている。今回、急性冠症候群(ACS)の既往があり、β遮断薬服用中の患者からの聞き取りで、呼吸器疾患を疑いβ遮断薬の変更を処方提案したことで、症状改善に至った一例について報告する。
【症例】80歳代女性、ACS、高血圧、気管支拡張症、心房期外収縮、骨粗鬆症の既往あり。ACS発症後、他院からの継続処方(クロピドグレル、テルミサルタン、カルベジロール、ピタバスタチン、アンブロキソール、リセドロン酸、クラリスロマイシン、レルベア®、他3剤)にて加療中。X年11月、投薬時の聞き取りで患者本人より「呼吸がしづらい」と訴えあり。カルベジロール服用中であったため非選択的β受容体遮断作用が呼吸困難の誘因である可能性を考慮し、選択的β1受容体遮断薬のビソプロロールへの変更を処方提案した。X年12月、呼吸困難の症状は改善し、散歩もできるようになったと笑顔と共にADLの向上がみられた。
【考察】ビソプロロールとカルベジロールには脈拍を低下させる陰性変時作用、心臓の収縮力を弱める陰性変力作用があり、さまざまな心疾患における有用性が証明されている。ビソプロロールはβ1受容体に選択的に作用する。一方でカルベジロールはα1受容体とβ1、β2受容体への作用を併せもつ。β2受容体は気管支平滑筋に存在するため、呼吸器疾患患者には気管支への影響が少ないビソプロロールが適している。本症例では呼吸器疾患を疑った患者に対し、ビソプロロールへの変更を処方提案することで呼吸器症状を改善することができた。薬局では患者情報が不足しがちであるため、患者への積極的な聞き取りが適正な薬剤選択に不可欠であると考えられる。