講演情報

[P-103-A]保険薬局における認知症患者の多職種連携の重要さを知った事例(認知症患者に対する多職種連携における保険薬剤師の役割)

小川 香織 ((株)ナカジマ薬局西円山店)
【背景】2024年1月、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らせる社会の実現を目指すため「認知症基本法」が施行された。認知症になったら何もできなくなるのではなく住み慣れた地域で慣れ親しんだ人達と共に希望を持って自分らしく暮らし続けるために、保険薬局としてできることはないかと考え、介入した事例を紹介する。
【事例報告】90代女性。同じく90代の夫と二人暮らし。1年ほど前からお渡ししたお薬がないと連絡が頻繁にくるようになり、違和感を抱き始めた。近所に頼れる人や家族もおらず、介護認定も受けていないとのことで地域包括支援センターの相談員へ連絡。当初は必要がないとなかなか受け入れてもらえず、介護認定の為の申請や訪問も出来なかった。問題なく病院受診もしていたが、半年ほど経ったある時、かかりつけの病院の予約受診を忘れ、体調不良になった。それを機会に自ら自分の体調に異変を感じ、包括の訪問や物忘れ外来の受診を受け入れた。介護認定、認知症診断確定、家族との関係修復、自分の状態を受け入れての生活がスタート出来ることになった。
【考察】保険薬局の薬剤師として、どこまで患者の生活に踏み込めるのか、どうすれば住み慣れた地域で、高齢者だけで安心して生活を続けることが出来るのか考えさせられた。地域には薬局が多く存在する。定期的に来局される患者とは顔なじみになる。体調変化を早期に気づくことが出来るのは薬剤師ではないか。薬剤師はまだまだ地域では閉鎖的な部分もあり、地域での位置づけが分かりづらいと指摘されている。地域包括ケアシステムを構築し、自分だけで解決せず多職種を巻き込み、互いの職能を理解し連携・協力することが地域における高齢者の生活には非常に重要であることを実感した事例であった。薬物療法だけでなく、予防や健康維持増進にも関わっていくことがこれからの保険薬剤師の役割ではないかと思う。