講演情報

[P-107-B]多職種連携による服薬支援が望めない若年性認知症患者に薬剤師が訪問介入し服薬状況を改善した一例

千葉 好美1, 野田 和多流1, 森 雅哉2, 石本 裕一3, 野澤 充3 (1.トライアドジャパン(株) 薬局事業本部 基幹薬局推進部 かもめ薬局北里健康館, 2.地域医療推進部, 3.トライアドジャパン(株))
【背景】厚生労働省の新オレンジプランで「若年性認知症施策の強化」が掲げられて以降、自治体では様々な支援策が推進されている。一方、現場で対応する若年性認知症患者は、高齢者とは異なり、診断の受け止め方や病識に個人差が大きく、葛藤やストレス、不安や孤立感が、怒りや悲痛といった感情として表出し支援困難になるケースも少なくない。
本報告では、訪問サービスの拒否が強く、多職種連携がほぼ得られなかった若年性認知症患者に対し、薬剤師による訪問薬剤管理のみ継続できたことで服薬状況の改善がみられた事例を紹介する。
【経緯】50代男性/要介護2/独居。潰瘍性大腸炎、短腸症候群によりCVポート並びにストーマ造設。消化器外科外来への通院に加え、同医療機関内に設置された認知症疾患医療センターの支援も受けている。X年11月、ケアマネジャーから依頼を受け訪問開始。X+1年2月、就労継続困難で勤務先を退職して以降、訪問サービスの拒否が強まり、ケアプラン上のサービスは全て撤退した。薬局はX-5年より当該患者の外来処方箋を応需していた経緯があり、唯一訪問を継続することができた。月4回の訪問と、処方提案による用法の整理に加え、X+1年2月~X+2年2月の1年間にわたり、お薬カレンダーの表示やセット方法を10回更新。止瀉薬を中心とした服薬状況の改善は、本人のストーマ管理を容易にしアドヒアランスの向上に寄与する成果を得られた。
【考察】若年性認知症患者への服薬支援は、日々変化する病識や薬識に対し迅速かつ柔軟に対応できるOODAループの思考が重要である。特に「Decide(決定)」の段階で、本人の納得を得ることが服薬支援の成否を左右する。納得を欠いた服薬支援は混乱を招き失敗しやすい。日常的な支援の積み重ねと信頼関係の構築は、将来ハイリスク薬や生命予後に関わるキードラッグが処方された際に、アドヒアランスを維持し適切な薬物治療の継続につながると考える。