講演情報

[P-112-A]薬局無菌室の重要性と在宅患者における薬剤師の役割について~末期がん患者の一例~

小松 布征, 石川 麻耶 ((株)マツモトキヨシ 調剤薬局マツモトキヨシ 新松戸3丁目店)
【目的】在宅療養中の終末期がん患者における疼痛管理として、経口用麻薬から注射用麻薬持続皮下投与への切り替えを行い、疼痛コントロールおよび患者・家族のQOL向上に寄与した事例を報告する。
【事例】80歳代男性、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧症、肺癌(Stage2B)
X年Y月労作時SAT低下にて通院困難となり訪問診療、居宅訪問(週1)が開始。在宅開始時NRS:5で、痛みの評価、副作用の確認を行いながら、経口用麻薬の継続投与をしていたが、X年Y+4月レスキュー使用増加、NRS:5が持続、嚥下機能低下もみられたため、持続皮下投与への切り替えを主治医に提案。薬局では、ナルサス®錠からナルベイン®注への換算、CADDポンプへの無菌調製、居宅訪問での残液、疼痛や副作用の確認、医師・看護師との連携により、追加調製、自宅への配達スケジュールの調整を行った。持続投与開始(Day0)は、0.5mg/ml,0.1ml/hrで開始、起きて生活する時間が増えた。Day6疼痛改善が見られず1.0mg/ml,0.1ml/hrに増量。Day42では1.0mg/ml,0.2ml/hrへ増量。以後は、腫瘍熱も加わり後臥床時間が増加。結果、劇的な疼痛改善は得られなかったものの、CADDポンプによりボタン1つでレスキューの投与が可能となり、介護負担の軽減、移動時や夜間の疼痛対応が容易となりQOL向上につながった。
【考察】在宅療養を希望する患者に対し、注射用麻薬持続皮下投与への提案が緩和ケアにおける疼痛緩和の一助となった。終末期においては、病状進行に伴うレスキュー頻度の増加に合わせてベース投与量の調整が必須であり、投与方法として簡便性の高い持続性の注射用麻薬投与が有用であると考える。無菌室はコスト面での課題があるため、地域薬局間での末期在宅患者の紹介等を相互で行うことにより、疼痛緩和に貢献できる体制づくりが期待される。注射用麻薬の調剤においては、残液管理や疼痛評価を含めた多職種連携が不可欠であり、薬剤師が在宅医療において重要な役割を果たす存在であることを示した一例と考える。