講演情報

[P-123-C]点眼用炭酸脱水酵素阻害剤が重篤な腎障害のある患者へ与える影響

奥井 裕一1, 川口 侑城3, 菅 裕亮5, 菊地 貞三4, 菅原 淳6, 吉田 諒平2 (1.なの花北海道(株) なの花薬局ことぶき店, 2.室蘭中央店, 3.とんけし店, 4.母恋店, 5.若草店, 6.道南事業部)
【目的】日本では点眼用炭酸脱水酵素阻害剤(以下CAI点眼)は重篤な腎障害のある患者へ投与禁忌となっている。これは、米国で内服用炭酸脱水酵素阻害剤が腎不全患者に対して投与禁忌となっていることが要因とされている。実臨床では、重篤な腎障害のある患者へ投与禁忌されている症例が散見される。しかし、CAI点眼による全身性有害事象の発現状況について調査した報告は限られている。本研究は全身性有害事象の発生の有無について確認することで腎機能低下患者におけるCAI点眼の安全性情報を明らかにすることを目的に調査した。
【方法】2022年6月29日~2025年4月16日に来局したCAI点眼が処方された、eGFR30mL/min未満の患者のうち、処方医師へその使用の可否について確認後処方継続となった患者を抽出した。対象患者の薬剤服用歴管理指導の記録から年齢、性別、平均剤数、eGFR、有害事象の有無を後ろ向きに調査した。
【結果】対象期間中に12名が抽出され、平均年齢77.6歳、男性4人、女性8人、平均内服剤数11.7種類、平均eGFR18.77mL/minであった。期間中に全身性有害事象のない患者は9名、手足のしびれがあった患者が1名、めまいがあった患者が1名、食欲不振、吐き気、めまいがあった患者が1名であった。いずれの全身性有害事象もその後寛解、もしくは治療中であった。
【考察】本研究で観察された全身性有害事象は、他疾患による症状で診断を受けていた。さらに既往歴や時系列の観点からもCAI点眼との因果関係は低いことが考えられた。今後さらなる症例の集積により、CAI点眼の安全性情報が明らかになることで腎機能低下患者における緑内障治療の選択の幅が広がると期待される。