講演情報

[P-136-A]クリニックとの連携を通じた薬局の新たな役割~薬局管理栄養士出向による糖尿病支援の一症例~

横山 遥花 ((株)なの花北海道 なの花薬局南小樽店)
【背景】2型糖尿病は、発症初期に適切な栄養指導を行うことで、血糖コントロールを維持・改善し、薬物療法を回避できる可能性が高い。一方で、管理栄養士が常勤していない医療機関では、十分な栄養介入が困難な現状がある。そのため薬局と医療機関が出向契約を結び、栄養指導を実施するケースがある。本症例は、管理栄養士不在のクリニックにおいて薬局管理栄養士が継続的に介入し、血糖コントロールの悪化を抑制したものであり、薬局を拠点とした多職種連携による包括的支援体制の一例として報告する。
【症例】40代女性。体重90.9 kg、BMI 36.0 kg/m2、HbA1c 6.5 %、食後血糖値120 mg/dL、糖尿病薬未処方の2型糖尿病患者。内科通院中であり、医師より薬局管理栄養士による栄養指導依頼があった。体重3%減を目標とし、食事・運動療法を開始。食事聴取から主食及び肉類の過剰摂取がみられたため、適正エネルギー量及び食事バランスの説明をした。
【経過】5か月間で3回栄養指導を実施し、医師へ指導内容を共有した。指導により肉類の摂取量減少と野菜の摂取量増加がみられたが、活動量の増加による主食量の増加と、行事による食事量の増加が課題となった。食事量増加時は翌日の食事で調整を図ること、まずは体重増加を回避し現状を維持することを優先目標として提案し、食事療法の継続を促した。介入後6か月時は体重89.1 kg(-2.0%)、BMI 35.2 kg/m2、HbA1c 6.0 %(-0.5%)と改善がみられ、薬物療法は導入されなかった。
【考察】管理栄養士不在の医療機関においても、薬局管理栄養士の継続的な介入と医師との連携により、血糖コントロールの悪化を防ぐ可能性が示唆された。これは、医療資源が限られた現場と薬局における連携の有用性を示すものであり、薬局管理栄養士の役割拡大の意義を示すと考えられる。