講演情報

[P-143-B]薬局薬剤師における新人研修受講と職務上の障壁との関連:横断研究

野口 鈴華 ((株)なの花西日本 なの花薬局 豊中店)
【目的】新人薬剤師においては能力と求められる業務にギャップがあるとされており,卒業後も様々な研修が実施されている.本研究の目的は新人研修と実務上の障壁の関連を明らかにすることである.
【方法】2025年1月16日~2月13日に,保険薬局店舗に勤務する薬剤師を対象に質問紙調査を実施した.主要評価項目は業務上の障壁の有無,副次評価項目は最も障壁を感じた業務,障壁の業務別詳細とし,数(割合)で記述した.新人研修受講経験と業務上の障壁の有無の関連の評価のため,性別,薬局勤務年数,病院勤務経験,OJTトレーナー経験を調整してロジスティック回帰分析を行った.
【結果】調査対象薬剤師322人のうち46.6%が解析対象となった.解析対象者背景は男性24.0%,薬局勤務年数中央値7年[四分位範囲3-18],新人研修受講経験ありは50.7%であった.主要評価項目である障壁を感じた経験ありが64.7%,最も障壁を感じた業務は薬学的な専門知識46.7%,薬学的な専門知識以外の患者対応方法26.7%,コミュニケーション16.0%であった.薬学的な専門知識の中で最も大きな障壁を感じた業務プロセスは薬剤管理指導51.3%で,中でも「小児の散剤の味・におい・服用方法」が44.0%で最も多かった.ロジスティック回帰分析の結果,新人研修受講の経験と業務上の障壁の有無には有意な関連は認められなかった(オッズ比0.75, 95%信頼区間0.2-2.3, p=0.618).
【考察】薬局薬剤師の65%が業務上の障壁を経験し,特に薬学的専門知識,薬剤管理指導,小児の散剤の味・におい・服用方法の指導に困難を感じていた.一方で,新人研修受講と障壁の経験には有意な関連がなく,現行の研修と実務のニーズに乖離があることがわかった.新人研修プログラムには,専門知識に加え,患者対応やコミュニケーションスキルの強化も必要かもしれない.