講演情報

[P-152-B]保険薬局における腎機能評価フィードバック活動の実施とその効果― 薬剤師へのアンケート調査による行動変容と課題

松本 優太1, 菅 美佳2, 田辺 憲人2, 正岡 亜弥子2, 水口 祐人2, 宗像 宏友2, 新田 昌稔2, 上田 奈津美2, 松麿 和樹2, 宮田 昌英2, 鳥井原 彩香2, 稲邊 慎也2, 山下 冬馬2, 高橋 渉2 (1.クオール(株) クオール薬局取手店, 2.クオール(株))
【目的】慢性腎臓病(CKD)患者に対する腎排泄型薬剤の適正使用は、保険薬局においても重要な課題である。そこで当薬局グループでは、2024年10月~11月に、腎機能低下が疑われる患者に対して腎機能低下時に用量調整が必要な薬剤が通常量で調剤された事例を抽出し、各薬局に個別フィードバックを実施した。本研究は、この活動が薬剤師の腎機能評価に対する意識や行動に与える影響、および今後の課題や研修ニーズを明らかにすることを目的とする。
【方法】フィードバック対象となった薬局に勤務する薬剤師を対象に、Web形式(Microsoft Forms)によるアンケート調査を実施した。設問には、腎機能評価に関する意識変化や実施状況、処方内容の変更に関して医師と相談した経験、日常業務上の課題、ならびに研修の必要性などを含めた。
【結果】回答者146名のうち、腎機能評価の重要性に対する意識が「向上した」と答えた薬剤師は97名(66.4%)であった。行動面では、腎機能評価の実施頻度が「増えた」「どちらかというと増えた」と答えた者は69名(47.2%)であり、45名(30.8%)が処方内容の変更を医師に相談した経験があった。一方、腎機能評価においては「検査値の入手困難」が最大の課題として挙げられ(71名、48.6%)、研修の必要性については120名(82.2%)が「必要」と回答した。
【考察】本取り組みにより、薬剤師の腎機能評価に対する意識は一定程度向上したが、行動変化は限定的であった。検査値の入手困難などの実務上の障壁が行動の定着を妨げている可能性があり、今後は支援体制の整備と継続的な研修の提供が求められる。なお、本研究はアンケート調査に基づくものであり、回答は薬剤師自身の主観に依存している点や、回答者に偏り(選択バイアス)がある可能性を考慮する必要がある。