講演情報

[特別講演]脳とAI、そして未来へ

池谷 裕二 (東京大学大学院薬学系研究科 薬品作用学教室 教授)
ERATO池谷脳AI融合プロジェクトでは、「脳にAIを組み込むことでどんなタスクが可能なるか」「脳をインターネットに接続することで世界をどのように感じるようになるか」「多数の脳を連携させることで心理状態はどのように変化するか」など、一見幼稚とも思われる問いに対し、真摯に取り組んでおります。例えば、脳に特製センサーを内蔵したチップを移植することにより、地磁気や血圧の変化など通常ならば感知できない環境や身体の情報を脳にフィードバックする実験を行っています。新たな知覚を得ることで脳の能力や行動パターンがどのように変化するかを調べるのが研究の目的です。さらに、脳が実際には知覚しているものの、個体レベルとして活用されていない潜在情報を、AIにより解読してフィードバックすることで脳機能の拡張を試みています。
 特別講演においては、この分野のこれまでの歴史をご紹介したうえで、私のプロジェクトの最近の進展についてお話しさせていただきたいと存じます。また、より一般的な話題として、人工知能によって人々の生活はどのように変わるのかについても会場の参加者と一緒に考えたいと思います。ヒトの脳機能はどこまで人工知能で置き換えられるでしょうか。人工知能が進化したら人の権利は侵害されるでしょうか。人工知能がもたらす未来の世界について考えて、そこから「人らしさ」とは何かという問題に踏み込んでみたいと思います。


【略歴】
1998年 東京大学大学院薬学系研究科 博士号取得
1998年 東京大学薬学部助手
2002年 コロンビア大学留学
2006年 東京大学薬学部講師
2007年 東京大学薬学部准教授
2014年 東京大学薬学部教授