講演情報
[SSY-1]薬剤師の裁量権から見えてくるもの・責務そして覚悟
○細谷 治 (日本赤十字社医療センター 薬剤部 薬剤部長)

医薬分業の起源は1240年頃、神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ2世が、主治医の処方薬による暗殺を恐れ、それを防ぐために別の者にチェックさせた事がその始まりであり、薬剤師制度の始まりであるとも言われている。それから数百年の時が流れ、ヨーロッパとは異なる道を辿ることとなったが、本邦でも医薬分業が成立した。そして現在、医薬分業率は80%をゆうに超えるに至った。改めて考えてみたい。薬剤師は調剤や医薬品の供給、その他の薬事衛生をつかさどる最高責任者として、国民の健康な生活を確保することを法律によって求められている(薬剤師法第1条)。一方、医師は、医師法第1条で医療などの最高責任者として、同様に国民の健康な生活を確保することを求められている。医薬分業は薬剤師法第19条や医師法第22条により法的に定められており、医師による例外規定はあるが、調剤は薬剤師の独占業務になっている。この日本版医薬分業制度の中で、果たして薬剤師はその責務を果たしているだろうか。2020年に法改正が行われ、薬剤師法第25条の2第2項により、薬剤師は調剤した薬剤の適正な使用のために必要があると認める場合は、調剤時だけでなく服用期間を通じて薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握し、患者又は看護に当たっている者に対し、必要な情報提供及び薬学的知見に基づく指導をすることを義務付けられた。まさに薬剤師が適正使用に必要と判断することこそ、薬剤師の裁量であると言えるのではないだろうか。この条文の意味するところとして、例えば薬の副作用のマネジメントは薬剤師の義務であるが、その方法や判断は薬剤師の自由な裁量権の及ぶ範囲であろう。すなわち、問診や視診、聴診や触診などのフィジカルアセスメントや画像の読影、TDMの結果や検査値などの評価に加え、薬剤師としての臨床経験に基づく適切な対応こそ、現行法制度下における裁量に違いない。そして、そこには必ず相応の責任が伴うことも付け足しておかなければならない。また、薬剤師による検査オーダーや処方、さらにワクチネーションなど、一部の限定的な医行為については法改正を要するため、医療の専門家のみならず法曹界や国民を巻き込む議論が必要となる。これら薬剤師の職能拡大には責務と覚悟が不可欠であり、それぞれの局面においてプロフェッショナリズムに基づく言動が求められる。
本セッションではOTC販売や災害時の裁量についても議論したい。
【略歴】
学歴
1990年 城西大学薬学部製薬学科 卒業
2003年 北海道薬科大学大学院製剤学特論研究室 研究生
2025年 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 修了
職歴
1990年 日本赤十字社医療センター薬剤部 入職
1992年 TTS技術研究所 研究員
1998年 医療法人豊仁会 三井病院薬剤室 室長
2001年 大森赤十字病院薬剤部 入職
2008年 城西大学薬学部 准教授
2019年 日本赤十字社医療センター薬剤部長
所属学会・他
日赤薬剤師会・副会長
日本医療薬学会・代議員、臨床研究委員会委員
日本緩和医療薬学会・代議員
日本死の臨床研究会・常任理事、国際交流委員会委員
日本医療バランスト・スコアカード研究学会・理事
日本臨床倫理学会、他
受賞歴
日本薬学教育学会・薬学教育実践奨励賞受賞(2019年)、日本医療薬学会JPHCS論文賞(2020年)
委員
薬学教育モデルコアカリキュラム改訂のためのワーキンググループ委員、6年制薬学教育制度調査検討委員会学修領域検討小委員会委員
本セッションではOTC販売や災害時の裁量についても議論したい。
【略歴】
学歴
1990年 城西大学薬学部製薬学科 卒業
2003年 北海道薬科大学大学院製剤学特論研究室 研究生
2025年 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 修了
職歴
1990年 日本赤十字社医療センター薬剤部 入職
1992年 TTS技術研究所 研究員
1998年 医療法人豊仁会 三井病院薬剤室 室長
2001年 大森赤十字病院薬剤部 入職
2008年 城西大学薬学部 准教授
2019年 日本赤十字社医療センター薬剤部長
所属学会・他
日赤薬剤師会・副会長
日本医療薬学会・代議員、臨床研究委員会委員
日本緩和医療薬学会・代議員
日本死の臨床研究会・常任理事、国際交流委員会委員
日本医療バランスト・スコアカード研究学会・理事
日本臨床倫理学会、他
受賞歴
日本薬学教育学会・薬学教育実践奨励賞受賞(2019年)、日本医療薬学会JPHCS論文賞(2020年)
委員
薬学教育モデルコアカリキュラム改訂のためのワーキンググループ委員、6年制薬学教育制度調査検討委員会学修領域検討小委員会委員
