講演情報

[SY11-1]後発医薬品の供給責任を果たすために──供給不安の克服と構造改革への挑戦

國廣 吉臣 (沢井製薬株式会社 執行役員 渉外部担当役員 兼 渉外部長)
2020年末に発覚した小林化工の事案を契機に、後発医薬品を中心とする供給不安は、社会的課題として広く認識されるようになっている。2025年4月時点においても、薬価収載医薬品約16,300品目のうち、約15%が「限定出荷」または「出荷停止」の状態にあり、必要な医薬品が医療現場に届かないという状況が続いている。私たち業界関係者は、この現実を重く受け止め、真摯に向き合う責任がある。

 当社は、後発医薬品の主要な供給企業の一つとして、安定供給の責任を果たすべく、さまざまな取り組みを行っている。業界全体で生じている供給制限に伴う需要の急増に対応するため、在庫の放出、工場稼働率の引き上げ、包装の集約などの対策を講じている。さらに、小林化工の子会社化による製造設備の活用や、自社工場の増設も進めている。

 こうした中、2024年5月に公表された「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」報告書では、製造販売企業に対し、信頼回復と安定供給に向けた責任ある対応に加え、10年・20年先を見据えた構造的な転換が求められている。後発医薬品業界には、「少量多品目生産」という構造的な課題が存在し、これが供給不安の要因の一つとなっている。多数の品目を取り扱い、大規模な製造体制を有する当社としては、こうした課題の克服に向けた役割と責任を自覚し、今後とも可能な限りの対応を行っていく。

 しかし、現在の状況は一企業の努力のみでは解決できない。供給不安は業界全体が抱える構造的課題であり、業界全体としての対応が不可欠である。当社は、小林化工の事案発生以降の数年間、日本ジェネリック製薬協会の会長会社として「信頼性向上プロジェクト」を軸に、協会の取り組みをリードしてきた。また、日本製薬団体連合会においては、私自身「供給不安解消タスクフォース」のリーダーとして、100回を超えるタスクフォースを開催する中で、全製造販売企業320社を対象とした当局との合同説明会の実施、全薬価収載医薬品の供給状況の毎月の調査と公表、いくつもの要因が複雑に絡み合って生じている現在の供給不安の解消策の検討と実施に取り組んでいる。

 今後は、成分単位での供給状況とその見通しを示した上で、より具体的で効果的な対策を講じていくことが、業界としての責務であると認識している。引き続き、当局や医療関係団体の皆様と緊密に連携しながら、この困難な課題に全力で取り組んでいく。


【略歴】
1984年、藤沢薬品工業株式会社に入社。営業(MR/所長)、新製品企画、営業戦略などに従事し、北米に駐在。
その後、アステラス製薬株式会社にて、中期戦略、薬価交渉、産業政策、国際渉外などを担当。
2012年よりAbbott Japan/AbbVie GKにて、医薬政策渉外・薬価流通戦略を本部長として統括。
2015年からは沢井製薬株式会社にて、渉外業務全般を担う。