講演情報

[SY13-1]門前立地ではない薬局との地域連携~課題と展望~

髙山 俊輔 (埼玉医科大学国際医療センター 薬剤部 主任/日本医療薬学会 がん専門薬剤師)
厚生労働省は2023年12月25日、「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」を設置し、これまでの議論のまとめを公表している。その中で、薬局は地域の医療・健康における公共的な活動方針を理解の上、地域において当該薬局の薬剤師の専門性を発揮することが求められている。個々の薬局ですべてを担うことが困難な機能として、健康・介護相談等(関係機関との連携)、夜間・休日対応、在宅対応(他の薬局との連携、関係機関との連絡調整を含む)、無菌製剤処理、医療用麻薬調剤、高度薬学管理、災害・新興感染症発生時の対応・支援などがある。これらの機能については、地域における拠点となる薬局による対応を含む薬局間連携による対応や、医療機関等の関係機関と必要な情報の共有を含めた連携体制の構築など、その機能ごとに地域の状況に応じた体制を構築していく必要性が示されている。
 日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)では、がん関連領域に関わるすべての人々が連携協力し合い、がん医療の発展や公衆衛生の向上に寄与することを目的に、様々な委員会やワーキンググループ(WG)が活動を行っている。『かかりつけ薬剤師・薬局のがん薬物療法に関する業務指針WG』では、抗悪性腫瘍薬を日常的に取り扱う機会が少ない保険薬局を対象とした業務ガイダンスの作成に続き、地域全体で患者を支える連携モデルの有効性を検証した。具体的にはグループでの協議と文献レビューに基づき質問項目を設定し、保険薬局薬剤師を対象にアンケート調査を実施した。また、地域特性を踏まえた連携体制づくりのため、医療機関・拠点薬局・その他薬局の薬剤師を含む研修会を開催し、バランス・スコアカードを利用して地域固有の課題と解決策を検討した。
 本講演では、これらの取り組みや、JASPO『教育研修委員会』が作成に協力した「薬局における疾患別対応マニュアル(がん)」を紹介する。がん診療への関与が少なかった薬剤師の皆様にもぜひご参加いただき、新たな知見や気づきとなれば幸いである。講演を通して、連携における障壁や連携を支える要因とは何か、地域連携の新たな可能性を議論していきたい。


【略歴】
2004年3月 城西大学薬学部製薬学科 卒業
2006年3月 城西大学大学院薬学研究科 医療薬学専攻修士課程 修了
2009年3月 城西大学大学院薬学研究科 薬学専攻博士課程 修了
2009年4月 埼玉医科大学国際医療センター薬剤部入職 現在に至る
【資格】
薬学博士、がん専門・指導薬剤師/医療薬学専門薬剤師(日本医療薬学会)、外来がん治療専門薬剤師(日本臨床腫瘍薬学会)、プライマリ・ケア認定薬剤師(日本プライマリケア・ケア連合学会)、緩和薬物療法認定薬剤師/麻薬教育認定薬剤師(日本緩和医療薬学会)、NST専門療法士(日本栄養治療学会)、遺伝性腫瘍コーディネーター(日本遺伝性腫瘍学会)、認定実務実習指導薬剤師/認定薬剤師(日本薬剤師研修センター)、日病薬病院薬学認定薬剤師/認定指導薬剤師(日本病院薬剤師会)、認定コーチ(日本臨床コーチング研究会)
【委員】
・日本プライマリケア・ケア連合学会
 緩和医療委員会委員、薬剤師部会実践活動委員、プライマリ・ケア薬剤師認定制度委員会委員
・日本臨床腫瘍薬学会
 かかりつけ薬剤師・薬局のがん薬物療法に関する業務指針ワーキンググループ副委員長、認定取得者のための支援体制整備検討ワーキンググループ委員