講演情報
[SY2-4]薬局管理栄養士と薬剤師の協働による効果:PDCA Studyの紹介
○庄司 雅紀 (大阪医科薬科大学 薬学部 社会薬学・薬局管理学研究室 講師)

どのような職場でも、それまでになかった新たな職種を配置し、既存のスタッフと馴染ませ、文化として定着させるには特別なエネルギーが必要である。
私は「薬局管理栄養士の職能発揮」という課題は、単に個人の素質や努力に帰するのではなく、組織・地域単位での包括的な議論が必要であると考えている。管理栄養士の薬局での雇用にあたっては、事前に薬局が目指すべきビジョン、管理者の意図や計画、スタッフ間の意識の十分な共有が必要である。仮に管理栄養士が十分に活躍できず、薬局事務と変わらない業務に終始した末に退職するような例があれば、それは薬局業界全体にとっての損失と捉えるべきである。
我々は2021年に実施したPDCA Studyを通じて、薬局管理栄養士が「研究への参加」を契機として患者への継続的な食事支援を新たに始め、それが介入期間を経て薬局内に文化として定着しうる可能性を実感した。PDCA Studyは、薬局管理栄養士と薬剤師が協働し、生活習慣病患者への定期的な食事支援を行い、臨床効果を観察した単群介入研究であり、患者の平均HbA1cの有意な低下を認めた。また、介入期間終了後に薬剤師と管理栄養士に対して実施したインタビューでは、半年間をかけて組織内の意識が更新されたことが感じられる発話が得られた。代表的なものとしては、「食事支援を行うことが当たり前になって、すごくやりやすくなった(20代 管理栄養士)」や、「この子はこういう仕事をやらないといけないっていうみんなの、マインドが変わっていった(30代 薬剤師)」などがある。我々はこの組織文化の変化のプロセスをKotterの8段階モデルに沿って解釈を試み、組織内の段階的変容を確認した。なお、本研究に登録された患者らの希望により、介入期間終了後にも食事支援は継続された。このように、本研究では臨床的な成果に加えて、薬局内の文化が改変されるプロセスを確認できた点にも大きな意義があったと考えている。
本講演では、PDCA Studyの概要とインタビュー内容を共有し、薬局管理栄養士が「当たり前に」職能を発揮するための組織づくりやマネジメント上の課題、そして地域連携も含めた実践への示唆について議論したい。
【略歴】
2016年4月 大阪薬科大学 助手
2016年6月 博士(薬学)
2018年4月 大阪薬科大学 助教
2025年4月 大阪医科薬科大学 講師
私は「薬局管理栄養士の職能発揮」という課題は、単に個人の素質や努力に帰するのではなく、組織・地域単位での包括的な議論が必要であると考えている。管理栄養士の薬局での雇用にあたっては、事前に薬局が目指すべきビジョン、管理者の意図や計画、スタッフ間の意識の十分な共有が必要である。仮に管理栄養士が十分に活躍できず、薬局事務と変わらない業務に終始した末に退職するような例があれば、それは薬局業界全体にとっての損失と捉えるべきである。
我々は2021年に実施したPDCA Studyを通じて、薬局管理栄養士が「研究への参加」を契機として患者への継続的な食事支援を新たに始め、それが介入期間を経て薬局内に文化として定着しうる可能性を実感した。PDCA Studyは、薬局管理栄養士と薬剤師が協働し、生活習慣病患者への定期的な食事支援を行い、臨床効果を観察した単群介入研究であり、患者の平均HbA1cの有意な低下を認めた。また、介入期間終了後に薬剤師と管理栄養士に対して実施したインタビューでは、半年間をかけて組織内の意識が更新されたことが感じられる発話が得られた。代表的なものとしては、「食事支援を行うことが当たり前になって、すごくやりやすくなった(20代 管理栄養士)」や、「この子はこういう仕事をやらないといけないっていうみんなの、マインドが変わっていった(30代 薬剤師)」などがある。我々はこの組織文化の変化のプロセスをKotterの8段階モデルに沿って解釈を試み、組織内の段階的変容を確認した。なお、本研究に登録された患者らの希望により、介入期間終了後にも食事支援は継続された。このように、本研究では臨床的な成果に加えて、薬局内の文化が改変されるプロセスを確認できた点にも大きな意義があったと考えている。
本講演では、PDCA Studyの概要とインタビュー内容を共有し、薬局管理栄養士が「当たり前に」職能を発揮するための組織づくりやマネジメント上の課題、そして地域連携も含めた実践への示唆について議論したい。
【略歴】
2016年4月 大阪薬科大学 助手
2016年6月 博士(薬学)
2018年4月 大阪薬科大学 助教
2025年4月 大阪医科薬科大学 講師
