講演情報

[SY5-1]服薬フォローアップ業務を浸透させるためには

富澤 崇 (株式会社ツールポックス 代表取締役/北里大学 客員准教授)
服薬フォローアップを語る切り口は、法律・制度、国・患者からの評価、専門知識、オペレーション、コミュニケーション、デジタル化、調剤業務全般、薬剤師のモチベーション、組織の収益性など、多岐にわたります。皆さんが気になる論点は、フォローアップの対象となる問題点に気づくための知識、実際のオペレーション、今後フォローアップがどう評価され、広がりを見せるのか、といったことだと思いますが、これらについては他のシンポジストに譲り、私からは組織開発(Organization Development)の観点で話題提供いたします。
 フォローアップは、法律上義務化されていますし、調剤報酬上で評価もされています。実行するのに特別な手順も機材も不要ですし、服薬指導の延長の業務であるため、やろうと思えばすぐにできることです。にもかかわらず、未だに(薬剤師法で義務化されて5年半経つのに)抵抗の声を耳にします。その理由は以下のアンケート結果から見えてきます。
 今回のシンポジストたちが運営している服薬フォローアップ研究会が薬剤師会員を対象に2024年に実施したアンケートで、職場でフォローアップが進まない理由を尋ねたところ、「従業員にフォローアップの必要性が理解されていない」「やり方がわからない」といった声が多く上がりました。また、フォローアップを推進するには何が必要かとの問いには、「フォローアップに時間を割くことへの職場の寛容さが必要」との意見が多くありました。これらは薬剤師のマインドセットの問題といえるのではないでしょうか。職場の中でミッションを共有し、やり方を決め、教え合い、待合室が込み合っている中でフォローアップのための電話を掛けることに互いが理解を示し合うといった関係性づくり、さらには手順書を作ったり、事例を共有したり、電話の子機の増設やLINE連携のシステム導入などのインフラ整備をしたりといった職場づくりに取り組もうとする一人一人の姿勢が必要ではないでしょうか。
 知識やスキルの獲得に目が向けられがちですが、Googleの社内調査結果で有名になった「心理的安全性」を高めるといった組織開発アプローチによって、従業員間の関係性を良くして、チームワークを育むことがフォローアップ業務を職場に浸透させる方法の一つになるかもしれません。そんな幅広い視点からシンポジウムのテーマについて、皆さんと一緒に議論したいと思います。


【略歴】
1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士)。山梨大学附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。城西国際大学薬学部准教授、複数の大学での非常勤講師として従事。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門の責任者、人事制度改革、ブランディング、新規事業創出プロジェクトなどに従事。2017年株式会社ツールポックス創業、人材開発領域のコンサルティング、研修講師、キャリア支援などを展開。北里大学客員准教授を兼務。