講演情報

[SY5-2]薬剤師業務としての服薬フォローアップの現在地 ~義務化、実践、そして未来~

染谷 光洋 (株式会社ナカジマ薬局 薬局事業部 部長代理)
2019年の薬機法改正により、薬剤師には「服薬期間中の継続的なフォローアップ」が義務化された。これは、薬剤師が必要と判断した場合に、患者が薬を受け取った後も服薬状況や体調の変化、副作用の有無などを確認し、適切に支援を行うことが求められるようになったことを意味する。さらに、2020年の調剤報酬改定では、「調剤後薬剤管理指導加算」や「特定薬剤管理指導加算2」などが新設され、薬剤師の対人業務が制度面から評価されるようになり、対物業務から対人業務への転換が一層進み、服薬フォローアップは注目を集めるようになった。しかし、その本質的な目的は、患者が薬物治療を安全かつ安心して継続できるよう支援することである。特に外来医療では、患者が次に医師と会うまでの期間を薬局薬剤師が担うことも多く、患者の治療を安心してつなぐために、薬剤師自身がその役割を自覚し、フォローアップに取り組むことが求められている。
 一方で現場には、「フォローアップを行いたいが時間的・人的リソースが足りない」「どう始めればよいのか具体的なイメージが持てない」といった声も少なくない。こうした課題に対して、服薬フォローアップ研究会では、フォローアップの実践を支援する取り組みを継続的に行っている。講義による制度や実務の解説に加え、電話、LINE、アプリ、対面など多様な手段による実践事例を共有し、現場での一歩を踏み出せるよう具体的な知見を提供している。また、同研究会では、外来がん治療専門薬剤師など、専門性の高い薬剤師による介入事例も紹介している。これらの薬剤師は、患者の疾患特性や治療フェーズに応じてフォローのタイミングや内容を柔軟に判断し、医療機関と連携しながら、より質の高い薬学的支援を実践している。
 本シンポジウムでは、法制度の変遷や現場で直面する課題、そして研究会で共有されてきた多様な事例をもとに、服薬フォローアップの「現在地」を確認し、これからの薬局薬剤師が果たすべき役割について、参加者の皆様とともに考えていきたい。


【略歴】
2008年 北海道薬科大学 医療薬学科 卒業、薬剤師免許 取得
2008年 株式会社仙台調剤 入社
2011年 株式会社ナカジマ薬局 入社(2024年~薬局事業部 部長代理)
2025年 日本災害医学会 災害医療認定薬剤師 認定

所属学会
日本薬剤師会、日本災害医学会、日本保険薬局協会

著書
ゼロから学ぶ薬学管理 (日経BP、2020年3月24日)
日経DI Online ナカジマ薬局の「実録!テレフォン服薬サポート」