講演情報

[SY7-1]OTC医薬品にかかるリスクコミュニケーション

太田 美紀 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構 安全性情報・企画管理部 部長)
近年、少子高齢化の進行や医療従事者の不足といった社会構造の変化を背景に、健康寿命の延伸を目指した健康増進、予防、未病への取組の重要性が一層高まっている。こうした中で、セルフケア・セルフメディケーションは、個人が自らの健康管理に主体的に関わる手段として注目を集めており、その一翼を担うものとしてOTC医薬品(一般用医薬品)の活用が期待されている。
 OTC医薬品は、「医療機関を受診せずに入手できる薬」という利便性から、「安全」との印象を持たれがちであるが、医薬品である以上、副作用や相互作用といったリスクも内在しており、適切な使用が不可欠である。特に、高齢者や複数の疾患を抱える患者では、医療用医薬品との飲み合わせに留意が必要な場面も多く、薬剤師や登録販売者など専門家による情報提供と関与の重要性はますます高まっている。
 さらに、医療と生活者の間の選択肢を拡充する観点から、スイッチOTCの推進やOTC薬の活用促進が政策的にも進められているが、それに伴い、国民に対するリテラシー向上と、専門家に求められる対応力の強化が求められている。
本発表では、OTC医薬品の適正使用をめぐる課題と、それを支える専門職の役割、そして今後のセルフメディケーション推進に必要な環境整備の方向性について整理するとともに、参加者の皆さまと課題認識を共有し、今後のあるべき姿について議論を深める機会としたい。


【略歴】
1997年   東京大学薬学部卒業
1999年   東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了
2000年   厚生省入省
2016年4月 厚生労働省医薬局安全対策課
2019年7月 同局総務課 薬局・販売制度企画室長
2021年9月 同課薬事企画官
2024年4月 (独)医薬品医療機器総合機構 安全性情報・企画管理部長