講演情報
[SY9-2]トレーシングレポート普及の取り組みと、良いトレーシングレポートとは何かについての考察
○鏑木 芳夫 (ファーマライズ株式会社 事業統括部 ファーマライズ医薬情報研究所 所長・薬剤師)

薬局・薬剤師が患者に対して一元的・継続的な薬学的管理を行う中で、また近年、対人業務の充実や多職種・地域との連携が進む中で、トレーシングレポート(服薬情報提供書、以下TR)は薬剤師業務において広く認知されるようになってきた。
TRは2000年代から運用され、2012年の診療報酬改定ではTRの提出により「服薬情報等提供料」の算定が可能となった。その後、2018年~2020年の改定では、算定方法の細分化や「服用薬剤調整支援料」「特定薬剤管理指導加算2」「吸入指導加算」「調剤後薬剤管理指導加算」等TR関連項目の新設、「地域支援体制加算」の実績要件の一つになるなど、TRの活用が推進されてきた。
当社グループではTRの普及と質向上を目的に、2018年4月~2021年3月にグループ内のTR事例を収集し、データベースを構築した。その中で好事例は社内発行物「プレアボイド・トレーシングレポート通信」で2か月に1回紹介し、共有してきた。取り組みの成果の一つとして、薬剤師の処方提案が医師に受け入れられる割合が増加し、残薬整理や服薬状況の改善、減薬、製剤特性に基づく提案等、薬剤師の専門性が医師との連携に寄与していることが示唆された。
社内で共有したTRの好事例の中から幾つかの事例を紹介する(腎機能低下時のファモチジンの用量調整、ストラテラ®の苦味による剤形変更提案、患者のライフスタイルを考慮した処方提案、SGLT2阻害薬による頻尿への対応、治療部位重複の可能性がある患者への対応、生薬重複による偽アルドステロン症が疑われる事例)。
良いTRとは、医師が短時間で内容を理解でき、医療や薬物療法の質向上に資するものである。そのためには、伝わりやすい構成、有意義な内容、受け入れやすい記載が求められる。例えば、構成については、疾患や薬剤ごとのフォーマットを整備することも有効と考えられる。また、根拠となる情報源には、添付文書、IF、ガイドライン、論文等があるが、それ以外にも実例(経験)は根拠は弱くとも実践的なヒントとなる場合がある。患者の利益を第一に考え、患者の声を尊重しつつ、適切な根拠に基づく情報を提供することが大切だと思われる。
TR作成は、情報を収集・整理・評価・加工し、相手に応じた的確な情報を提供するDI業務そのものである。TRについても、他のDI業務同様、情報源や事例等を薬局間で共有することが、各薬局のTR作成を支援し、内容の質向上に繋がると考えられる。
【略歴】
1993年 東京理科大学薬学部薬学科卒業 薬剤師免許取得
1998年 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻中退
1998年 株式会社東京物産(現ファーマライズホールディングス株式会社) 入社
東京都、埼玉県の薬局で管理薬剤師、研修担当、DI担当などを経て、
2011年 ファーマライズ医薬情報研究所 DI室長
2014年 ファーマライズ医薬情報研究所長(兼任)
2009年 認定実務実習指導薬剤師取得
2017年-2021年 東京薬科大学薬学部客員教授(実務実習を通じて)
TRは2000年代から運用され、2012年の診療報酬改定ではTRの提出により「服薬情報等提供料」の算定が可能となった。その後、2018年~2020年の改定では、算定方法の細分化や「服用薬剤調整支援料」「特定薬剤管理指導加算2」「吸入指導加算」「調剤後薬剤管理指導加算」等TR関連項目の新設、「地域支援体制加算」の実績要件の一つになるなど、TRの活用が推進されてきた。
当社グループではTRの普及と質向上を目的に、2018年4月~2021年3月にグループ内のTR事例を収集し、データベースを構築した。その中で好事例は社内発行物「プレアボイド・トレーシングレポート通信」で2か月に1回紹介し、共有してきた。取り組みの成果の一つとして、薬剤師の処方提案が医師に受け入れられる割合が増加し、残薬整理や服薬状況の改善、減薬、製剤特性に基づく提案等、薬剤師の専門性が医師との連携に寄与していることが示唆された。
社内で共有したTRの好事例の中から幾つかの事例を紹介する(腎機能低下時のファモチジンの用量調整、ストラテラ®の苦味による剤形変更提案、患者のライフスタイルを考慮した処方提案、SGLT2阻害薬による頻尿への対応、治療部位重複の可能性がある患者への対応、生薬重複による偽アルドステロン症が疑われる事例)。
良いTRとは、医師が短時間で内容を理解でき、医療や薬物療法の質向上に資するものである。そのためには、伝わりやすい構成、有意義な内容、受け入れやすい記載が求められる。例えば、構成については、疾患や薬剤ごとのフォーマットを整備することも有効と考えられる。また、根拠となる情報源には、添付文書、IF、ガイドライン、論文等があるが、それ以外にも実例(経験)は根拠は弱くとも実践的なヒントとなる場合がある。患者の利益を第一に考え、患者の声を尊重しつつ、適切な根拠に基づく情報を提供することが大切だと思われる。
TR作成は、情報を収集・整理・評価・加工し、相手に応じた的確な情報を提供するDI業務そのものである。TRについても、他のDI業務同様、情報源や事例等を薬局間で共有することが、各薬局のTR作成を支援し、内容の質向上に繋がると考えられる。
【略歴】
1993年 東京理科大学薬学部薬学科卒業 薬剤師免許取得
1998年 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻中退
1998年 株式会社東京物産(現ファーマライズホールディングス株式会社) 入社
東京都、埼玉県の薬局で管理薬剤師、研修担当、DI担当などを経て、
2011年 ファーマライズ医薬情報研究所 DI室長
2014年 ファーマライズ医薬情報研究所長(兼任)
2009年 認定実務実習指導薬剤師取得
2017年-2021年 東京薬科大学薬学部客員教授(実務実習を通じて)
