講演情報

[WS-A-01]留学生リクルートに必要なインフラとマーケティング戦略を考える

*芦沢 真五1、*堀田 泰司2,3,4、*白石 勝己5、*三輪 仁志6 (1. 神田外語大学 教育イノベーション研究センター 教授、2. 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 研究開発部客員教授、3. 高等教育資格承認情報センター(NIC-Japan) シニア・アドバイザー、4. Director at Large, TAICEP (The Association of International Credential Evaluation Professionals) 、5. 公益財団法人アジア学生文化協会 理事長、6. 立命館アジア太平洋大学 アドミッションズ・オフィス(国際))
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キーワード:

留学生リクルート、ユネスコ東京規約、外国学習歴・資格認証、デジタル・マーケティング

多様な留学生を受け入れてキャンパス環境を国際化していくことは、日本の高等教育界にとって最優先課題の一つである。世界的に留学生獲得競争が激化している中で、優秀が留学生を受け入れるためには、留学生獲得戦略の確立とリクルートのためのインフラ整備が求められている。

PART 1. 導入 このワークショップでは、まず「留学生リクルートに必要なインフラとは何か」を考える。ユネスコの地域条約(アジアの地域条約は「東京規約」)は、国境を越える学生や高度人材の学修歴を適切に評価するため国際的連携とFCEに関連する理念を提唱している。この東京規約の理念に基づいて、外国学修歴の評価(FCE:Foreign Credential Evaluation)が適切に行われる環境整備が必要となっている。また、世界的に進展する学修歴証明のデジタル化に対応したFCEのノウハウを蓄積していくことも課題である。さらに、海外の大学では学生募集・出願システムのデジタル化が進化し、志願者がオンライン情報にどうアクセスし、どう行動しているかをリアルタイムでモニターする、デジタル・マーケティングの手法が一般的に取り入れられている。こうした取り組みの背景事情について認識を共有する。(神田外語大学 芦沢真五)

PART 2. 世界各国で展開されるFCEと国際ネットワークでは、実際にFCEはどのように世界で実践されているのだろうか?欧州、北米、オセアニアでは政府機関もしくは民間のFCE専門機関が存在しており、個々の大学が海外からの出願者の書類審査を実施する際に必要な支援、助言を行う体制が整備されている。たとえば、欧州では、各国にENIC-NARICセンターがあり、北米では民間機関がFCE機関の役割を担っている。このパートでは、FCE機関がユネスコ地域条約の理念に基づいて形成している国際ネットワークの紹介、FCE機関が大学に対して提供しているサービス、FCEにかかわる専門家の職能団体であるTAICEP (The Association for International Credential Evaluation Professionals)の活動などを紹介する。そして、日本全体のFCE機能強化を目指し、海外の教育制度の情報を提供し、海外のFCE専門家による研修事業を今年度から開始する大学改革支援・学位授与機構の傘下にある高等教育資格承認情報センター(NIC-Japan)の活動について紹介する。(NIC-Japanシニアアドバイザー、広島大学名誉教授 堀田泰司)

PART 3. FCEが取り扱う外国学修歴評価の実践例 実際に日本国内で、海外からの直接出願をする留学志願者の書類審査を行っている事例を紹介する。近年では、特定国からの出願だけでなく、複数の国をまたがって中等教育(高校レベル)を修了する出願者もおり、FCEの業務に求められる専門性は高度化、複雑化している。また、FCEは同等性(受入国における教育水準や内容と比較して同等性を検証)に加えて、真偽性(書類記載事項の信ぴょう性)も評価する必要があり、慎重な判断を求められる。こうした現実的なFCEのプロセスに関して事例をあげながら、ワークショップ参加者同士が意見交換しながら、協働学習をおこなう。(アジア学生文化協会理事長、白石勝己)

PART 4. 国際学生リクルート戦略の確立とデジタル・マーケティングの運用 FCEの取組の重要性は当然のことながら高いものがあるが、世界的な留学生獲得競争が展開する中で、そもそもの志願者の獲得についても課題となっている。その中で、特にコロナ禍以降は、従来のリクルーターが世界を飛び回る募集活動スタイルから、より戦略的かつ検証可能なデジタル・マーケティングが主流になっている。立命館アジア太平洋大学(APU)で運用されている各種のマーケティング・ツールなどを紹介するとともに、個々の大学が、どのようなマーケティング戦略の立てていくべきか、戦略立案をするための考え方、立案プロセスについて意見交換していく。マーケティング戦略は、個別大学の実情の併せて立案していくものであるが、基本的に視座については一定のスキームが確立されている分野である。今回は、APUの事例をスキームに基づき紐解きながら、デジタルマーケティングが個々の大学に適合した戦略として実践可能なものであり、引いては日本留学を世界にマーケティングしていくための取り組みとなる可能性について発表する。(立命館アジア太平洋大学アドミッションズ・オフィス 三輪 仁志)