Presentation Information
[T2-O-3]Reconstruction of the ice sheet/shelf variability for the last 2 centuries based on the beryllium isotope of surface marine sediments from East Antarctica★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*Yuri YAMAZAKI1, Yusuke SUGANUMA2,1, Takuya ITAKI3, Atsuko AMANO3, Takeshige ISHIWA2,1, Kosei E YAMAGUCHI4 (1. The Graduate University for Advanced Studies,SOKENDAI, 2. National Insititute of Polar Resaech, 3. Geological Survey of Japan AIST, 4. Toho University)
【ハイライト講演】山﨑氏は,総合研究大学院大学修士2年であり,近過去の南極氷床融解の復元について取り組んでいる.近年の急激な氷床融解傾向の起源を衛星観測以前に遡って探るという野心的なテーマについての講演であり,要注目である.(ハイライト講演とは...)
Keywords:
Be isotope,modern,Circumpolar Deep Water (CDW),surface marine sediment
近年の衛星観測により,南極氷床が急速に融解していることが明らかになった.また,海洋観測により,現在の融解の主原因は比較的温暖な周極深層水(Circumpolar Deep Water:CDW)の大陸棚上への流入による棚氷底面の融解であると明らかになりつつある.しかし,過去の海洋環境・氷床変動のデータやCDWのプロキシが不足しているため,両者の関係は未解明な点が多い.近年,南極沿岸堆積物中の10Beと9Be濃度がそれぞれ棚氷・氷床変動のプロキシとして注目されている(White et al., 2019; Iizuka et al., 2023).そこで,本研究は堆積物中のBe同位体の空間分布の特性からCDWプロキシとしての有用性の評価と,この評価を基にした過去約200年間における南極棚氷・氷床変動の復元を試みた.試料は,CDW流入が観測されるトッテン氷河(TG)とリュッツホルム湾(LHB)で第61次南極地域観測隊により採取された表層海底堆積物を用いた.Be同位体の空間分布の特性にはTGの11地点とLHBの8地点の最表層を,過去の変動復元にはTGの棚氷縁近傍に位置するSt.14Bとダルトンポリニヤに位置するSt.26 における表層22 cmを対象とした.これらの試料に対して210Pb年代測定,粒度分析,およびBe同位体分析を行った.その結果,Be同位体の空間分布の特性は両領域において,10Be濃度はCDWの流入経路の上流,9Be濃度は棚氷縁近傍で高くなる傾向を示した.従って,10Beは氷床融解水起源というよりCDW流入に,9Beは南極大陸からの砕屑物供給に対応して変動している可能性が高い.次に,St.14BとSt.26の表層22 cmの16層準で210Pb年代測定を行った結果,それぞれ1880年と1810年以降から堆積していることが示された.両地点の粒度は,深度方向で変化が小さかったことから比較的安定した堆積環境であったと考えられる.一方,両地点の10Be濃度は,比較的一定であったのに対して,9Be濃度は, St.14Bが1950年代から現在に向かって12%増加,St.26が1920年代から14%減少した.この結果は,過去140〜210年間において棚氷縁へのCDW流入は安定していたが,南極大陸起源の砕屑物供給は増加していたことを示す.つまり,南極氷床・棚氷は少なくとも1950年代以降に融解傾向が加速した可能性が示された.これらのデータは,近年の温暖化傾向と南極氷床の融解傾向の関係を理解する上で重要であるが,データの空間分布や時間分解能は十分ではない.今後,過去のCDWの変遷と南極氷床変動ダイナミクスを明らかにするため,さらなる試料の分析を進める予定である.
参考文献
White, D.A., Fink, D., Post, A.L., Simon, K., Golton-Fenzi, B., Foster, S., Fujioka, T., Jeromson, M.R., Blaxell, M. , Yokoyama, Y. (2019) Beryllium isotope signatures ice shelves and sub-ice shelf circulation, Earth Planet. Sci. Lett. 505, 86-95.Iizuka, M., Seki, O., Wilson, D., Suganuma, Y., Horikawa, K., van de Flierdt, T., Ikehara, M., Itaki, T., Irino, T., Yamamoto, M., Hirabayashi, M., Matsuzaki, H., Sugisaki, S.(2023), Multiple episodes of ice loss from the Wilkes Subglacial Basin during the Last Interglacial, Nature communications,14(1)
参考文献
White, D.A., Fink, D., Post, A.L., Simon, K., Golton-Fenzi, B., Foster, S., Fujioka, T., Jeromson, M.R., Blaxell, M. , Yokoyama, Y. (2019) Beryllium isotope signatures ice shelves and sub-ice shelf circulation, Earth Planet. Sci. Lett. 505, 86-95.Iizuka, M., Seki, O., Wilson, D., Suganuma, Y., Horikawa, K., van de Flierdt, T., Ikehara, M., Itaki, T., Irino, T., Yamamoto, M., Hirabayashi, M., Matsuzaki, H., Sugisaki, S.(2023), Multiple episodes of ice loss from the Wilkes Subglacial Basin during the Last Interglacial, Nature communications,14(1)
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