2025年度組織学会年次大会

特別セッションⅡ

9月28日(土)・大会1日目 14:40-16:00、16:10-17:00(130分)

会場・富士見ゲート棟:G503教室




本郷バレーのスタートアップ・エコシステム➁

「先輩から後輩へ受け継がれる起業家活動-ロボティクス領域での起業実践-」



 登壇者 

稲葉 雅幸 氏 (東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻 名誉教授)

小倉 崇  氏   (株式会社シンクロボ 代表取締役社長)

孫 小軍  氏   (BionicM株式会社 代表取締役社長)

 

司会:田路 則子 (法政大学経営学部 教授)


 講演内容   

「本郷バレー」という言葉が浸透する以前より、東京大学からは多くのアカデミック・スピンオフが輩出されてきた。最近はAI系のスタートアップの伸長がメディアを賑わしているが、ロボティクスや材料、ライフサイエンスの領域での起業も多い。こうした理工系の大学院生による起業家活動で中心的役割を果たしているのが大学の研究室であることは、欧米はもちろん、日本でも同じである。大学の研究室の先輩起業家たちがロールモデルになり、起業が連鎖していくのである。

今回は、ロボティクス分野(ロボットの制御や設計、製作に関する研究を行う学問分野)研究の最先端を行く東京大学大学院 情報システム工学研究室(JSK)に焦点をあてて、長く研究室を運営されてきた稲葉名誉教授にその歩みを紹介いただいた上で、JSKからスピンオフしたスタートアップ企業の創業者の方々に経験をお話しいただく。大学や研究室の役割、OB・OGのネットワーク、大学による起業家教育やスタートアップ支援施策、VCとの関係、政府の支援策等、さまざまな視点から、日本のスタートアップ創出と成長の課題や可能性を議論したい。 


 登壇者のご紹介 
 

  
稲葉 雅幸 氏 (東京大学大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 名誉教授)


 登壇者プロフィール 
 1986年、東京大学大学院工学系研究科 情報工学博士課程を修了(工学博士)。同年、東京大学工学部 機械工学科 講師。1989年、東京大学大学院工学系研究科 情報工学専攻 助教授。2000年、同教授。

以来、2024年春まで、東京大学にて知能ロボットの研究および教育に携わってきた。ヒューマノイド系ロボティクスを扱う情報システム工学研究室(JSK)を主宰し、多くの研究者や起業家を世に送り出してきた。


 


 

小倉 崇 氏 (株式会社シンクロボ 代表取締役社長)
 

 登壇者プロフィール 

東京大学大学院 情報システム工学研究室にて博士号を取得。トヨタ自動車㈱にて生活支援ロボットの開発を行った後、人型災害救助ロボットの開発を手がける㈱SCHAFT(SCHAFT Inc.)に参加。2013年に同社がGoogleに売却されてからも、引き続き二足歩行ロボットの研究を行う。SCHAFT解散後、2019年にはスマイルロボティクス 株式会社を創業し、配膳・下膳ロボットや棚搬送ロボットを開発。2023年7月、アイリスオーヤマ㈱グループの100%子会社となり、社名をシンクロボ 株式会社に変更。

現在、BtoBの掃除ロボットを中心にアイリスオーヤマ㈱グループと共にロボット開発を行っている。今後は介護用ロボットなど、多様な分野に用途を拡大する計画である。


 

孫小軍  氏(BionicM株式会社 代表取締役社長)


 登壇者プロフィール 

1987年、中国貴州省生まれ。9歳の時に骨肉腫で右脚切断。2009年に交換留学生として来日し、東北大学で学ぶ。2010年、東京大学大学院 工学系研究科の修士課程に進学。国の公的補助を活用し、初めて義足を装着。2013年、修士課程修了後、ソニー㈱に入社。2015年、東京大学大学院博士課程に進学。情報システム工学研究室(JSK)に所属し、ロボット義足の研究に従事。2016年には大学発新産業創出プログラム(START)に採択され、2018年、博士号取得とともにBionicM 株式会社を創業。

従来の動力を持たない義足とは異なり、複数のセンサーを内蔵してユーザーの力加減や歩き方を分析し、膝部分のモーターを自動で制御することによって歩行を自然にアシストするロボット義足を開発。ジェームズダイソンアワード2017やSXSW(South by Southwest) 2017を授賞し、内閣府や関東経済産業局のプログラムにも認定されて、現在はパートナーの獲得や海外展開を積極的に行っている。