プレナリーセッション

日 時:2024年3月5日(火)9:00〜12:15
会 場:広島大学総合科学部 L102 講義室

 

1.会長挨拶 森川博之会長(東京大学)

変わらないために変わり続ける
 
 変わらないために変わり続ける。禅問答みたいなよくわからないフレーズですが、前半の「変わらないもの」が企業のパーパス(存在意義)、後半の「変わり続けるもの」が事業を成功させるための方策と理解すると、なんとなく理解できます。
 「変わらないもの」が大切にされるようになってきた背景として、VUCAと言われる「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の時代になったことを挙げることができます。不確実性が高く将来の予測がとても難しくなってしまいました。ロードマップを引くことができず、試行錯誤を繰り返しながら前に進んでいかざるを得ません。
われわれを取り巻く環境は容赦なく変わり続けています。電子情報通信学会の起源は1917年に創立された電信電話学会です。まだ100年しか経っていません。100年後の2123年の電子情報通信学会は現在とはまったく異なる姿になっているかもしれません。企業と同じように、電子情報通信学会も変わり続けるはずです。
 デジタルテクノロジーも、産業構造、経済構造、社会構造を大きく変えていきます。現在の世の中のあり方は過渡的なものであり、デジタルで新しいビジネスの余地が必ず生まれるというマインドでもって、新しい産業や社会制度の確立を目指していかなければいけません。デジタルで地域中小企業の生産性を向上させることができれば、地域経済の活性化のみならず、日本経済の成長・発展に資することもでき、まったく違った光景が見えてくるはずです。
 デジタルシフトを加速し、社会や産業や経済の仕組みそのものの再定義を進めていかなければいけません。COVID-19で得られた気づきをも大切にしながら将来を深く洞察し、社会、産業、生活、地方の変革に寄与し続けることができればと思っています。
 「無形資産時代の価値創造」「マーケティングマイオピアと固定概念」「タスク型ダイバーシティ」といった視点が未来にバトンを渡すための鍵となることをお話します。

 

2.表彰式
教育功労賞
学術奨励賞
フェロー称号贈呈式

 

3.基調講演

・人とITの共創による価値創造  木谷 昭博(マツダ(株)執行役員)

概要
マツダは、世界で唯一ロータリーエンジンの量産化技術を実現するなど、ものつくりや独自技術にこだわりのある会社である。自動車業界では比較的小規模で、限られたリソースの中で最も効率の良い開発、生産を追求するため、マツダデジタルイノベーションに早くから投資し、ものつくりのプロセスの効率化を進めてきた。
 近年では組織横断型のビジネス構造改革を進め、人の意識が変わり、仕事が変わり、人が成長し、デジタル技術を駆使した変革行動をとれるようになってきた。本講演では、ものつくり企業における人とITの共創による価値創造とビジネス構造改革の進展及び今後の展望を紹介する。

 

・大規模言語モデル ーこれまでの進展と課題ー 鈴木 潤(東北大学 教授)

概要
大規模言語モデル(Large Language Model、LLM)の登場により、人間が自然に話す言葉(自然言語)を用いて様々な日常業務に相当する情報処理を指示し、実行させることができるようになった。また、新たなビジネスやサービスの創出に大きく寄与し、社会の在り方を変容させるほどの大きな影響を及ぼしている。一方で、LLMが実サービスで利用されることによって新たな技術的・社会的課題が明らかになり、多くの議論がなされるようにもなった。本講演では、言語モデルや文章生成に関する研究に従事してきた研究者の観点から、言語モデルの発展の経緯と様々なタスクに応えられる主要因と考えられる技術や理論を独自の視点で解説する。また、現在の到達点や注意点を含め、重要と考えられるいくつかの課題を選び紹介する。最後に、今後の言語モデル関連の研究トレンドや将来の発展の方向性などについても議論したい。

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