第28回日本統合医療学会学術大会

大会長挨拶

第28回日本統合医療学会学術大会

大会長 鶴岡浩樹

日本社会事業大学大学院 教授
(福祉マネジメント研究科)
つるかめ診療所 副所長


 

 

会員の皆様におかれましては、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

コロナ禍明けで4年ぶりに対面での学術大会となった静岡大会の興奮が冷めあらぬ中、第28回日本統合医療学会学術大会の開催まで7カ月となりました。本稿では第28回大会の概要について、進捗状況もまじえてご案内させていただきます。

会期は2024年12月14日(土)-15日(日)で、ライトキューブ宇都宮にて開催いたします。テーマは『地域共生社会における統合医療の役割』です。栃木県での開催は初めてということで、栃木県支部長である鏑木孝昭先生を中心に、栃木県支部の力を結集して準備を進めています。

さて、わが国は人類史上類を見ない超高齢多死社会を迎えようとしています。そのはじまりが、団塊の世代が75歳を超える2025年と言われています。75歳を超えると、命に関わる疾病や要介護状態となるリスクが急速に高まるからです。国は2025年に向けて、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体化して提供する地域包括ケアシステムの確立を目指してきました。そして、2025年にさしかかる今、地域包括ケアシステムから地域共生社会への展開が求められています。地域共生社会とは、地域の住民や多様な主体が分野や属性の壁を越えてつながり、互いに支え合う社会です。人口減少、少子化、労働力の劣化、単身世帯の増加、地域格差、ポストコロナなど、現場の課題は多様化かつ複雑化しており、地域共生社会を実現することでこれらの課題に柔軟に対応しようとするねらいがあります。そこで栃木大会では、地域共生社会において統合医療がどのような役割を果たすことができるのか考える大会にしたいと思います。

本学会が定めた統合医療には、医療モデルと社会モデルがあります。医療モデルは、主に病院や診療所で、患者の治療を中心とした疾病の治療を目指した狭義の統合医療です。一方、社会モデルは、生活の場に焦点を当てており、地域住民を中心とした疾病予防や健康増進を目指す広義の統合医療を指します。これまでの学術大会は、医療モデルに関わるテーマが多かったので、社会モデルに光を当てたという意味では、本大会は新たなる挑戦と言えます。講演では、地域をベースに統合医療を実践されている山本竜隆先生、温泉や入浴の第一人者で栃木ゆかりの早坂信哉先生、地域共生社会のモデルと言われている勝部麗子先生、在宅医療連合学会の会長を務める石垣泰則先生、栃木県支部の前支部長でおられた岡孝和先生をはじめ、ご高名な先生方にお願いしています。シンポジウムでは、本学会認定「社会モデル」施設の取組み、地域共生社会に必須とされる多職種多機関連携、緩和ケア、ファシアなどを定例のテーマに加えました。ワークショップでは、身体均整法、プライマルボディワーク、古武術と介護、鍼などの取組みを体験していただきます。市民公開講座においては、社会学者の上野千鶴子先生、武術研究家の甲野善紀先生をお招きします。また各種共催セミナーを企画しております。会期翌日となる12月16日には、エクスカーションツアーとして、「社会モデル」認定施設である那須まちづくり広場への訪問を企画しています。こちらは鏑木孝昭栃木県支部長が運営する施設群で、廃校となった小学校を0歳から100歳までのコミュニティに再生し、統合医療に関わる様々な取組みをしています。

以上が現時点で紹介できる栃木大会の内容です。会場となるライトキューブ宇都宮はJR宇都宮駅直結で、改札口から徒歩2分というアクセスです。宇都宮市はジャズとカクテルと餃子の町としても知られており、郷土料理の他、夜も楽しめます。栃木県は夏に雷が多く、天の恵みとして雨を降らせ豊作をもたらすことから雷様(らいさま)と崇められ、宇都宮市も雷都(らいと)と呼ばれています。今日の宇都宮を彩る路面電車(ライトライン)は稲光の黄色がシンボルカラーとして選ばれました。また宇都宮では黄色の鮒を食べると疫病に罹らないという言い伝えがあり、無病息災の祈りを込めた「黄ぶな」という郷土玩具が有名です。これらの逸話は統合医療と関連が深いと思われ、栃木大会のポスターは黄色を基調としました。一歩足をのばせば、日光、那須、足利、益子などの観光地も楽しめます。

皆さまを栃木でお待ちしております。