講演情報
[R2-10]ナノダイヤモンドのより低温下での超高圧合成の試み
*入舩 徹男1、國本 健広1、小川 知夏1、井上 紗綾子1、新名 亨1、大藤 弘明2 (1. 愛媛大・GRC、2. 東北大・理)
キーワード:
ナノダイヤモンド、超高圧合成、ガラス状炭素、水素化ダイヤモンド
ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD = ヒメダイヤ)は、グラファイトの直接変換により合成される10-20 nm程度の微細なダイヤモンド多結晶の焼結体であり、単結晶ダイヤモンドを凌ぐ極めて高い硬度を持つとともに、高い透光性を示す。NPDは最初の発表から20年余りを経て、その高い硬度やナノ多結晶性・透光性を利用して超高圧実験を始めとした多くの応用が進められるとともに、静的超高圧(>10万気圧)下で合成された物質として世界で初めて製品化にも成功している。一方で、グラファイトからのNPD合成には15 GPa程度の超高圧と2300℃程度の高い温度が必要であり、現在のところ最大1 cm程度のNPDの更なる大型化のためには、よりマイルドな圧力・温度での合成が望ましい。
我々は川井型マルチアンビル超高圧装置により、多様な炭素源を出発物質として用いたNPD合成をおこない、よりマイルドな条件下での高品質NPDの合成を試みている。これらの結果、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)を出発物質として用いた場合に、同じ圧力でもより低い温度でのNPD合成が可能であることを示した。9~25 GPaの広範な圧力条件における系統的な実験の結果、圧力15 GPaにおいて最も低温(1800℃)で高品質なNPDバルク体の合成が可能になった。これ以下の圧力ではグラファイトの準安定的生成により、例えば12 GPaでは純粋なNPD合成には2200℃以上の高温が必要なことがわかった。15 GPa・1800℃で得られた試料は高い透光性を示すが、硬度はグラファイトから得られるNPDに比べてあまり高くない(ヌープ硬度Kn = 100-110 GPa程度、通常のNPDはKn = 130-145 GPa)。
一方で、更に低温下でのNPD合成を目指した一連の実験の過程で、炭化水素を出発物質とした超高圧合成により未焼結のナノダイヤモンド粉末の生成を確認した。圧力15 GPa、温度1000~1500℃領域で得られたナノダイヤモンドは、最小1 nm程度の極めて微細な結晶からなり、その表層は水素で終端されている「水素化ナノダイヤモンド」であることが明らかになっている。この水素は数百℃程度の加熱により除去することができ、ほぼ純粋なナノダイヤモンド粉末の生成も確認されている。
ナノダイヤモンドは、近年ドラッグ・遺伝子デリバリーのキャリアなどとして注目されている。しかし通常の爆轟法などによるナノダイヤモンドは、グラファイトを始めとした様々な不純物を含むとともに、粒径も通常は数nm以上かつ不揃いであり、このような応用のためには不純物の除去や分級などのステップが必要である。本研究による静的超高圧合成ナノダイヤモンドは、容易に純粋なダイヤモンドへと転換できるとともに、従来にない1 nm領域までの微小サイズかつ粒径の揃ったナノダイヤモンドであり、今後生物工学や医療・創薬への応用なども期待される。
我々は川井型マルチアンビル超高圧装置により、多様な炭素源を出発物質として用いたNPD合成をおこない、よりマイルドな条件下での高品質NPDの合成を試みている。これらの結果、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)を出発物質として用いた場合に、同じ圧力でもより低い温度でのNPD合成が可能であることを示した。9~25 GPaの広範な圧力条件における系統的な実験の結果、圧力15 GPaにおいて最も低温(1800℃)で高品質なNPDバルク体の合成が可能になった。これ以下の圧力ではグラファイトの準安定的生成により、例えば12 GPaでは純粋なNPD合成には2200℃以上の高温が必要なことがわかった。15 GPa・1800℃で得られた試料は高い透光性を示すが、硬度はグラファイトから得られるNPDに比べてあまり高くない(ヌープ硬度Kn = 100-110 GPa程度、通常のNPDはKn = 130-145 GPa)。
一方で、更に低温下でのNPD合成を目指した一連の実験の過程で、炭化水素を出発物質とした超高圧合成により未焼結のナノダイヤモンド粉末の生成を確認した。圧力15 GPa、温度1000~1500℃領域で得られたナノダイヤモンドは、最小1 nm程度の極めて微細な結晶からなり、その表層は水素で終端されている「水素化ナノダイヤモンド」であることが明らかになっている。この水素は数百℃程度の加熱により除去することができ、ほぼ純粋なナノダイヤモンド粉末の生成も確認されている。
ナノダイヤモンドは、近年ドラッグ・遺伝子デリバリーのキャリアなどとして注目されている。しかし通常の爆轟法などによるナノダイヤモンドは、グラファイトを始めとした様々な不純物を含むとともに、粒径も通常は数nm以上かつ不揃いであり、このような応用のためには不純物の除去や分級などのステップが必要である。本研究による静的超高圧合成ナノダイヤモンドは、容易に純粋なダイヤモンドへと転換できるとともに、従来にない1 nm領域までの微小サイズかつ粒径の揃ったナノダイヤモンドであり、今後生物工学や医療・創薬への応用なども期待される。