講演情報
[R3-P-08]AlOOH-AlSiO3OH系における含水アルミノケイ酸塩の高温相関係
*高市 合流1、西 真之2、周 佑黙3、町田 真一4、北原 銀河5、吉朝 朗6、入舩 徹男7、井上 徹1 (1. 広島大・先進理工、2. 大阪大・院理、3. 中国地質大、4. 総合科学研究機構、5. 高エネ研、6. 熊本大、7. 愛媛大GRC)
キーワード:
含水アルミノケイ酸塩、深部水循環、マルチアンビル装置
海溝から地球内部へ沈み込むスラブは、堆積物層、玄武岩質地殻層、かんらん岩層で構成されており、それぞれの岩石層にはさまざまな組成の含水鉱物が含まれていると考えられている。かんらん岩層の低温領域では、含水マグネシウムケイ酸塩(DHMSs)が広い圧力範囲で安定である。玄武岩層では、Alに富むDHMSsやFe-Tiオキシ水酸化物が主要な水の運び手である。堆積物層では、含水アルミノケイ酸塩がDHMSsよりも高温で水を保持できる。特に、含水アルミノケイ酸塩の一種であるEgg相(AlSiO3OH)は、ダイヤモンド包有物として自然界で発見されている[1]。したがって、地球深部マントルにおける水循環を詳細に理解するためには、含水アルミノケイ酸塩の高温相関係を調べることが重要である。本研究では、AlOOH–AlSiO₃OH系における含水アルミノケイ酸塩の相関係を、22 GPa、1400-2275 Kの条件下で川井型マルチアンビル装置(KMA)を用いて調査した。X線回折測定および回収試料の組成分析に基づき、1500 K以上ではEgg相にδ-AlOOH成分が固溶することが分かった(Figure 1)。さらに、1800 K以上では、出発試料のバルク組成に応じて、Al₂.₀₃Si₀.₉₇O₆H₂.₀₃(Phase I)およびAl₂.₁₁Si₀.₈₈O₆H₂.₁₁(Phase II)という未知の含水アルミノケイ酸塩が出現した。X線回折パターンから結晶構造の解明には至っていないが、Aluminous D相[2]や最近報告されたPhase Psi[3]とは一致しないことが分かった。本研究の未知相は、少なくとも2275 Kまで大量の水を保持可能であり、典型的なマントルの地温勾配を超える熱安定性を示す。したがって、沈み込んだ堆積物は、遷移層から下部マントル上部にかけての水の貯蔵庫となり得ることが示唆される。なお、発表では含水アルミノケイ酸塩の相関係に関する最近の研究内容についても紹介する予定である。
[1] R. Wirth et al., EPSL 259 (2007) 384-399.
[2] MG. Pamato et al., Nat. Geosci. 8 (2015) 75-79.
[3] B. Wang et al., Nat. Commun. 16 (2025) 1038
[1] R. Wirth et al., EPSL 259 (2007) 384-399.
[2] MG. Pamato et al., Nat. Geosci. 8 (2015) 75-79.
[3] B. Wang et al., Nat. Commun. 16 (2025) 1038