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[R6-09]冷却速度指標としての斜長石・磁鉄鉱形態:秋田県潮瀬崎ドレライト岩床の例

*星出 隆志1、久家 誠大1、青山 結乃1 (1. 秋田大・国際資源)
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キーワード:

貫入岩、冷却時間、アスペクト比、樹枝状晶、側枝間隔

マグマから晶出する鉱物の形態がマグマの冷却速度に依存することは広く知られている。近年では Holness (2014) により、貫入岩体中の斜長石のアスペクト比(長軸/短軸:AR)が冷却時間と相関することが示され、この関係を用いた冷却速度指標の可能性が提案されている。本研究では、秋田県男鹿半島南西部・潮瀬崎海岸に分布する、漸新世潮瀬ノ岬砂礫岩中に貫入した厚さ約3.8 mのドレライト岩床を対象とした。この岩床は、砂岩層と上位の火山礫凝灰岩層の間に調和的に貫入しており、Kano et al. (2007) により21.3±1.1 MaのK-Ar年代が報告されている。岩床から母岩との境界距離に応じた複数試料を採取し、岩石学的特徴および斜長石・磁鉄鉱の形態と冷却速度の関係を調査した。

 岩床の母岩との境界から上下0.5 m以内では柱状節理が明瞭で、vesicle layering(Toramaru et al., 1996)が岩床と平行に発達する。急冷周縁部は斑状組織を呈するアルカリかんらん石玄武岩で、かんらん石(仮像)・斜長石斑晶を含み、石基は斜長石・不透明鉱物(チタン磁鉄鉱・イルメナイト)・メソスタシスから成るインターサータル組織である。内部はインターグラニュラー組織を示すアルカリかんらん石ドレライトで、斑晶としてかんらん石仮像・斜長石・普通輝石・不透明鉱物を含む。急冷部の全岩化学組成はCaOに乏しく(~5 wt%)、TiO₂/10–MnO–P₂O₅図(Mullen, 1983)やZr/Y–Zr図(Pearce and Norry, 1979)でそれぞれ海洋島アルカリ玄武岩及びプレート内玄武岩の領域にプロットされる。岩床の高さ方向の全岩MgOおよびNi濃度はS字状に変化し、かんらん石斑晶の重力沈降を示唆する。
 
 斜長石のアスペクト比(AR)について、Holness (2014) は岩床内で周縁に向かってARが増加しつつも、境界近傍ではARが逆に減少する「marginal reduction」現象を報告している。一方、潮瀬崎岩床では、内部(AR = 3.1–3.2)から上下の周縁部(AR = 7.0–8.3)に向かって単調な増加傾向を示し、「marginal reduction」は確認されなかった。磁鉄鉱の形態は、周縁部の急冷相では樹枝状である一方、内部ではpolyhedralな形態となる。この変化を定量化するため、寅丸・矢巻(1997)に倣い、磁鉄鉱の樹枝状結晶の側枝間隔を測定するとともに、一次元熱伝導モデルを用いて冷却速度を推定した。その結果、側枝間隔は冷却速度の約−0.25乗に比例して減少する関係が得られた。これは、磁鉄鉱の形態が冷却履歴を反映することを定量的に示すものである。

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