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[R6-10]九重火山群火山岩類の地球化学的特徴

*山中 壮馬1、柴田 知之1、藤原 涼太郎1、折戸 達紀1、幣島 太一1、芳川 雅子1 (1. 広島大学)
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キーワード:

九重火山群、微量元素組成、Sr-Nd-Pb同位体組成

西南日本弧上の火山は、フィリピン海プレートを構成するセグメントの一つである四国海盆で生成された玄武岩やその上の堆積物が沈み込み、活動しているとされる。その西南日本弧の西端に位置する九重火山群(e.g. Shibata et al., 2014)は第四紀活火山であり、1995–1996年に水蒸気噴火(~マグマ水蒸気噴火)を経験した、現在でも活発な火山である(Kawanabe et al., 2015)。しかしながら、その火山岩類の微量元素組成(希土類元素等)やSr同位体比の報告例はKita et al. (2001)、芳川ほか(2019)、藤原ほか(2020)などに限られており、Nd-Pb同位体組成に関しては報告例がない。そのため、未だその起源やマグマ進化過程について十分に理解されていない。そこで、本研究では九重火山群火山岩類の微量元素組成とSr-Nd-Pb同位体組成を報告し、その起源やマグマ進化過程を解明することを目的とした。
Yamanaka et al. (under review) によれば、九重火山群の火山岩類は、斑晶鉱物モード組成から主に角閃石を含まずカンラン石を多く含むグループ(Ol-g)と直方輝石を多く含むグループ(Opx-g)、そして角閃石を多く含むグループ(Hbl-g)の3つのグループに大別される。さらに、記載岩石学的特徴の違いからOl-gは、2つのグループ(Ol-g1とOl-g2)に、Hbl-gは3つのグループ(Hbl-g1、Hbl-g2、Hbl-g3)に、細分類できる。このようにして分けた6つのグループの各主成分元素組成と一部の微量元素組成(Rb, Ba, Nb, Sr, Zr, Y)は、6つのグループがそれぞれ異なるマグマ進化過程を経験した可能性を示唆している。
 また、その他微量元素組成を測定した結果、これら6つのグループは微量元素パターン図においても異なる特徴を示すことが明らかとなった。Ol-g1やOl-g2はその他のグループに比べ、Rb, Ba, Th, U等に枯渇する。また、Ol-g1はOl-g2に比べ、Large-ion lithophile(LIL)元素に富み、Nbに枯渇した組成を示す。Opx-gはその他のグループに比べ重希土類元素(HREE)に富む。Hbl-g2はその他のグループと比較し、LIL元素に富む。Hbl-g3は6つのグループの中で最もHREEや中希土類元素(MREE)に枯渇する。Hbl-g1も比較的HREEやMREEに枯渇するが、Hbl-g3よりはそれら元素に富んでいる。また、Sr-Nd-Pb同位体組成を測定した結果、九重火山群の火山岩類は、87Sr/86Sr = ~0.7039 – ~0.7054、143Nd/144Nd = ~0.5125 – ~0.5128、206Pb/204Pb = ~18.23 – ~18.31、207Pb/204Pb = ~ 15.55 – ~15.59、208Pb/204Pb = ~38.29 – ~38.51という範囲を示すことが分かった。また、その組成はIndian MORBの起源マントル、四国海盆玄武岩、フィリピン海プレート上の堆積物、そして地殻(堆積岩など)の大まかに4つの端成分で説明できることを示唆している。さらに、6つのグループはSr-Nd-Pb同位体組成でもそれぞれ異なる特徴を示す。本講演では、それらの特徴や進化過程の違い等について議論する。

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