講演情報

[S2-02]CO2-水-岩石反応が浸透率に及ぼす影響の評価:安山岩の例

*西山 直毅1、徂徠 正夫1、増岡 健太郎2、志賀 正茂3、寺井 周4 (1. 産業技術総合研究所、2. 大成建設、3. テキサス大、4. JOGMEC)
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キーワード:

浸透率、CO2-水-岩石反応、安山岩、流通試験

著者らは、火山岩の地熱貯留層にCO2を圧入して採熱・発電を行う「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」プロジェクトの一環として、地化学反応に伴う水理特性変化に関する検証を進めている。貯留層には熱水が存在することが想定され、CO2が溶解することで酸性の流体が形成される。酸性流体の存在下では、安山岩や玄武岩といった火山岩は高い反応性を示すことが予想され、溶解や沈殿によって間隙構造や浸透率が変化する可能性がある。本研究では、安山岩コアを用いた高温下でのCO2溶解水の流通試験を実施し、地化学反応が浸透率に与える影響を評価した。
 試料には、貯留層の模擬岩石として安山岩(群馬県浅間山)を用いた。流通方向に沿った反応の起こり方の違いを捉えるために、直径30 mm、長さ200 mmの長尺コアに整形した。安山岩の鉱物組成は、斜長石、ガラス、斜方輝石、単斜輝石、不透明鉱物、および二次鉱物である。試験前の間隙率は22 %、浸透率は(2–3) × 10−16 m2あった。試験では、CO2 (CO2分圧:10–14 MPa)を純水に溶解させたCO2溶解水を、200 ℃、間隙圧10 MPa、封圧11–15 MPa の条件下で42日間流通させた。浸透率変化に対する流速の影響を検証するために、流速は0.02および0.1 mL/minとした。実験の結果、浸透率は試験開始後7–10日目で約1桁低下したが、その後は継続的に増加した。浸透率の増加速度は流速が大きいほど顕著であった。流入面から約1 mm下流の領域までは溶解が卓越し、斑晶および石基はほぼ消失し、最大0.3 mmサイズの新たな間隙が多数形成されていた。さらに下流では溶解と沈殿の両反応が進行し、間隙表面の近傍にはスメクタイトと推測される粘土鉱物が沈殿していた。溶解は斑晶と比べて石基で顕著であった。石基ではガラスが選択的に溶解し、相対的に溶解が遅い斜長石と輝石の粒子は間隙表面に残存していた。石基の溶解が特に顕著な領域では、間隙同士が新たに連結しており、このような連結性の向上が浸透率の増加に寄与したと考えられる。