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[S2-10]炭素流体と超塩基性岩の反応による物性と流体組成の変化

*中川 嵩斗1、片山 郁夫1、伊藤 禎宏1、横山 正2 (1. 広島大・院理工、2. 広島大・院理工融合)
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キーワード:

CCS、ブルーサイト、カンラン岩、蛇紋岩、炭酸塩化

二酸化炭素を地中に貯留・処分するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の中でも二酸化炭素を炭酸塩岩として地中に固定する鉱物トラップが近年注目されている。なかでも、マントルを構成するカンラン岩は二価の陽イオンを多量に含むため二酸化炭素の貯留ポテンシャルが高いと言える。しかし、炭素流体と岩石の反応による鉱物トラップにおける主要な課題として、「炭酸塩化の反応速度が未解明」「炭素固定をモニタリングする手法の未確立」が挙げられる。そこで、炭素流体とカンラン岩および蛇紋岩の反応によって岩石物性(空隙率、電気比抵抗、地震波速度)や流体の化学特性(pH、イオン濃度)の時間変化の測定および反応岩石試料の微細構造を観察することで、炭素固定をモニタリングする際に有効なパラメータを確立するとともに、超塩基性岩の炭酸塩化を明らかにすることを目的とした。 試料は北海道の幌満川沿いで採取された水質変質をほとんど受けていないカンラン岩と、千葉県の房総半島で採取されたリザダイト・クリソタイルを含む蛇紋岩を用いた。これらの試料を一辺15mm程度のキューブ状に加工した。各岩石試料を超純水とともに個別の小型容器へ注入し、圧力容器内に静置した。圧力容器内を真空引きした後、CO2ガスを圧入し、反応実験を開始した。なお、実験は室温で行い、PCO2は1MPaとした(液体のpHは3.9)。二酸化炭素の注入を開始してから1日、2日、5日、10日、20日、50日、100日、200日の計8回反応試料を回収し、空隙率、電気比抵抗、地震波速度の物理特性を測定するとともに、流体のpHやイオン濃度を計測した。反応から200日が経過した試料の薄片を作成し、EPMAとFIB-SEMによる反応面の微細組織観察を行った。 測定の結果、カンラン岩の物理特性には大きな変化が見られなかったが、蛇紋岩の物理特性は反応による変化が見られた。反応後の蛇紋岩の空隙率は反応前の1%から2%程度まで上昇し、電気比抵抗は105(Ω・m)から104(Ω・m)に低下したが、地震波速度には優位な違いは見られなかった。流体の化学特性については、カンラン岩と蛇紋岩どちらも反応によるpHの上昇およびイオン濃度の変化が見られた。流体のpHは、両岩石との反応により反応開始直後に急上昇し、その後一定の値に落ち着いた。(カンラン岩で約5.5、蛇紋岩で約6.5)。イオン濃度については、Siイオン、Mgイオン、Feイオン、Alイオンの測定を行った。その中でも、MgイオンとSiイオンに着目し、Mg/Si比を計算した。カンラン岩のMg/Si比は約1.3に対して、蛇紋岩では流体中のMg/Si比が20以上と著しく上昇した。これはブルーサイトの溶脱を反映していると考えられる。蛇紋岩は時間変化によって褐色の反応面が内部に進行しており、それは空隙率の増加と、鉱物界面での変質による。なお、岩石表面近傍では、炭酸塩鉱物の出現が見られた。炭素流体とカンラン岩および蛇紋岩の反応によって物理特性が変化することが明らかになった。本研究から、蛇紋岩と炭素流体の反応の進行により物性特性と流体組成が変化することを示した。特に、嶺岡蛇紋岩に含まれるブルーサイトはカンラン岩の主要構成鉱物であるオリビン、蛇紋岩の主要構成鉱物である蛇紋石と比べても溶解速度が非常に速い。ブルーサイトの溶脱が物理特性、流体組成に影響を及ぼしている事が示された。炭素固定のモニタリングはブルーサイトの溶脱によるMg/Si比の変化、電気比抵抗の変化を観察することが有効である。

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