講演情報
[R1P-14]秋田県釈迦内鉱山第11鉱体から見出されたbalkaniteについて
*田中 崇裕1、浜根 大輔2 (1. 日鉄鉱コンサルタント㈱、2. 東京大学物性研究所)
キーワード:
バルカン鉱、水銀、釈迦内鉱山、黒鉱、海底熱水鉱床
黒鉱鉱床及び海底熱水性鉱床は,亜鉛,鉛,銅を主体とする塊状硫化物鉱床であるが,主要金属元素のほか,カドミウム,銀,アンチモン,砒素などの微量元素に加え,水銀も濃集していることが知られている(Glasby et al., 2008; USGS, 2012).黒鉱鉱床の水銀は,主にtetrahedrite族鉱物に含まれるほか,sphalerite,galena,pyrite等にも含まれることが知られており(西山・港 1973; Glasby et al., 2008; Zhu et al 2020),現世の海底熱水鉱床においては,それらに加えて辰砂として沈殿していることも知られている(Herzig and Hannington, 1995; Pracejus and Halbach, 1996).水銀は,高温(約250–350 ℃)の海底熱水環境では,主として硫化物錯体として輸送されると考えられている(Barnes et al., 1967; Pokrovski et al., 2008).その後,熱水が冷却し,海水との混合や酸化還元状態・pHの変化を受けることで辰砂等の含水銀鉱物が沈殿する(Dickson, 1964; Varekamp and Buseck, 1984).また,水銀は海底熱水鉱床の鉱化ステージの後期に熱水中に濃集する元素であることも示唆されている(Suzuki et al., 2008).
Balkaniteは,Cu₉Ag₅HgS₈の理想式を持つ鉱物であり,1973年にブルガリアの層状鉛-亜鉛-銅鉱床であるSedmochislenitsi鉱山から見出された.その後,層状銅鉱床,銅-ニッケル-(コバルト)-鉛-銀-水銀鉱脈鉱床,浅熱水性金-銀鉱床からも報告されているが,未だ世界でも十数か所でしか記載されていない稀産鉱物である.また,原記載論文では,balkaniteはその産状から鉱化ステージの最末期に低温の熱水から晶出した鉱物であることが結論付けられている(Vasil et al., 1973).
釈迦内鉱山第11鉱体のbalkaniteは,主にbornite,digenite,pyrite,そして微量のsphalerite,chalcopyrite,galena,enargiteからなる鉱石中にstromeyeriteと共に5 μm以下の微細な粒として産し,digeniteとbornite中に含まれる.
SEM-EDSによる定量分析の結果, Cu 39.24,Ag 36.55,Fe 0.95,Hg 8.31,S 16.92,合計101.95 wt%という分析値(2点の平均値)が得られ,総原子数を23として計算した結果,Cu9.00Ag5.05(Hg0.62Fe025Cu0.21)Σ1.08S7.87という実験式が得られた.
Balkaniteが見出された鉱石は,digeniteとenargiteが特徴的に含まれているほか,borniteとpyriteの共生関係が認められることから,Einaudi et al. (2003)の硫化状態の相図に基づくと,ベースメタル硫化物からなる一般的な黒鉱と比べて,低温で生成されたものと考えられる.釈迦内鉱山第11鉱体のbalkaniteも原記載論文と同様,海底熱水系の低温部における銀及び水銀に富む熱水環境において生成されたものと考えられる.多くの黒鉱鉱床や海底熱水鉱床において,高硫化状態鉱物及び鉱物組み合わせが認められる銀に富む箇所が存在することが知られているが,そのような場では,水銀はbalkaniteの形で存在している可能性がある.
Balkaniteは,Cu₉Ag₅HgS₈の理想式を持つ鉱物であり,1973年にブルガリアの層状鉛-亜鉛-銅鉱床であるSedmochislenitsi鉱山から見出された.その後,層状銅鉱床,銅-ニッケル-(コバルト)-鉛-銀-水銀鉱脈鉱床,浅熱水性金-銀鉱床からも報告されているが,未だ世界でも十数か所でしか記載されていない稀産鉱物である.また,原記載論文では,balkaniteはその産状から鉱化ステージの最末期に低温の熱水から晶出した鉱物であることが結論付けられている(Vasil et al., 1973).
釈迦内鉱山第11鉱体のbalkaniteは,主にbornite,digenite,pyrite,そして微量のsphalerite,chalcopyrite,galena,enargiteからなる鉱石中にstromeyeriteと共に5 μm以下の微細な粒として産し,digeniteとbornite中に含まれる.
SEM-EDSによる定量分析の結果, Cu 39.24,Ag 36.55,Fe 0.95,Hg 8.31,S 16.92,合計101.95 wt%という分析値(2点の平均値)が得られ,総原子数を23として計算した結果,Cu9.00Ag5.05(Hg0.62Fe025Cu0.21)Σ1.08S7.87という実験式が得られた.
Balkaniteが見出された鉱石は,digeniteとenargiteが特徴的に含まれているほか,borniteとpyriteの共生関係が認められることから,Einaudi et al. (2003)の硫化状態の相図に基づくと,ベースメタル硫化物からなる一般的な黒鉱と比べて,低温で生成されたものと考えられる.釈迦内鉱山第11鉱体のbalkaniteも原記載論文と同様,海底熱水系の低温部における銀及び水銀に富む熱水環境において生成されたものと考えられる.多くの黒鉱鉱床や海底熱水鉱床において,高硫化状態鉱物及び鉱物組み合わせが認められる銀に富む箇所が存在することが知られているが,そのような場では,水銀はbalkaniteの形で存在している可能性がある.

