講演情報
[R2P-01]単結晶ガンドルフィ法で得られる回折パターンと強度の補正項
*早川 怜志1、奥寺 浩樹2 (1. 金沢大・理工(現:京都大・院理)、2. 金沢大・理工)
キーワード:
単結晶、X線回折、ガンドルフィカメラ、回折パターン、逆格子点
(背景)
小惑星探査機によって回収された鉱物を解析することは初期太陽系の進化を探求する鍵である[1]。そのため,完全非破壊で精密な回折データの取得が求められる。しかし,地球外物質の鉱物試料には結晶内部に歪みや双晶を伴うことが多く[1][2],また、これらの鉱物試料は数十μmサイズと極微小であり貴重なものである。そこで単結晶試料からガンドルフィカメラを用いて粉末X線回折パターンを得て,それを使ってリートベルト解析することができるかどうかを考える。このカメラを用いて単結晶試料から得られる粉末回折パターンは不完全であるため[3][4],本研究ではそれを補うためにガンドルフィパターンの完全な記述を試みる。
(解決すべき三つの不完全性の記述)
ガンドルフィカメラで得られる回折図形には三つの不完全性がある。一つはガンドルフィ法による回折弧が部分的なものであり,条件によっては強度が得られない指数が生じることである(βhkl 角度依存性)[5][6]。二つ目は回転軸 A′′ と結晶の方位との関係に依存してガンドルフィパターンが変化することである(結晶方位への依存性)[7]。また,ガンドルフィ法による回折弧内の回折線強度はその回折弧の長さが短いほど強く,また回折弧の両端で最も強い(回折弧内部の強度の不均一)[6][7]。
I. βhkl 角度依存性および結晶方位への依存性
回折弧が不完全なとき、これには単に s 環(回転軸 A′′ のまわりで回転する逆格子点が描く円周)が小さい場合だけではなく s 環の内でエバルト球と交差しない部分がある場合もある。後者には s 環がエバルト球と全く交差しない場合と部分的にしか交差しない場合の二通りがある。それらは逆格子ベクトル r*hkl と A′′ との間の角度 βhkl と,r*hkl に対応するX線のブラッグ角 θhkl に基づき39通りの状況に分類される。またガンドルフィパターンは結晶を取り付ける向きに依存して変わる。本研究では,結晶の回転軸の方向と結晶の方位を試行錯誤的に検証することでフィルム上の不完全な回折弧の両端の位置を求めることができた(図a,b)。
II. 回折弧内部の強度の不均一
回折弧内部の強度の不均一(むら)を再現するには s 環がエバルト球とどのように交差するのかを明らかにしなければならない。そのため逆格子点 Rhkl の軌跡の式を三次元座標系 XYZ で導出し(図c),これからエバルト球との交差頻度を導くことで回折弧内の強度の不均一を記述することができた。上記を実装することで単結晶ガンドルフィ法によるリートベルト解析が可能になる。
(引用文献)
[1] Nakamura, T. et al. (2011) Science, 333, 1113-1116.
[2] Nakamura, T. et al. (2022) Science, 379, eabn8671.
[3] Gandolfi, G. (1964) Mineralogica et Petrographica Acta, 10, 149-156.
[4] 藤田陽平. (2016) 金沢大学卒業論文.
[5] Canfield, D. V. and Sundeen, D. A. (1988) Powder Diffraction, 3(3), 162-164.
[6] Gregorkiewitz, M. (1994) Journal of Applied Crystallography, 27, 855-859.
[7] Zhang, Z. (1980) SCIENTIA SINICA, XXIII(10), 1278-1285.
小惑星探査機によって回収された鉱物を解析することは初期太陽系の進化を探求する鍵である[1]。そのため,完全非破壊で精密な回折データの取得が求められる。しかし,地球外物質の鉱物試料には結晶内部に歪みや双晶を伴うことが多く[1][2],また、これらの鉱物試料は数十μmサイズと極微小であり貴重なものである。そこで単結晶試料からガンドルフィカメラを用いて粉末X線回折パターンを得て,それを使ってリートベルト解析することができるかどうかを考える。このカメラを用いて単結晶試料から得られる粉末回折パターンは不完全であるため[3][4],本研究ではそれを補うためにガンドルフィパターンの完全な記述を試みる。
(解決すべき三つの不完全性の記述)
ガンドルフィカメラで得られる回折図形には三つの不完全性がある。一つはガンドルフィ法による回折弧が部分的なものであり,条件によっては強度が得られない指数が生じることである(βhkl 角度依存性)[5][6]。二つ目は回転軸 A′′ と結晶の方位との関係に依存してガンドルフィパターンが変化することである(結晶方位への依存性)[7]。また,ガンドルフィ法による回折弧内の回折線強度はその回折弧の長さが短いほど強く,また回折弧の両端で最も強い(回折弧内部の強度の不均一)[6][7]。
I. βhkl 角度依存性および結晶方位への依存性
回折弧が不完全なとき、これには単に s 環(回転軸 A′′ のまわりで回転する逆格子点が描く円周)が小さい場合だけではなく s 環の内でエバルト球と交差しない部分がある場合もある。後者には s 環がエバルト球と全く交差しない場合と部分的にしか交差しない場合の二通りがある。それらは逆格子ベクトル r*hkl と A′′ との間の角度 βhkl と,r*hkl に対応するX線のブラッグ角 θhkl に基づき39通りの状況に分類される。またガンドルフィパターンは結晶を取り付ける向きに依存して変わる。本研究では,結晶の回転軸の方向と結晶の方位を試行錯誤的に検証することでフィルム上の不完全な回折弧の両端の位置を求めることができた(図a,b)。
II. 回折弧内部の強度の不均一
回折弧内部の強度の不均一(むら)を再現するには s 環がエバルト球とどのように交差するのかを明らかにしなければならない。そのため逆格子点 Rhkl の軌跡の式を三次元座標系 XYZ で導出し(図c),これからエバルト球との交差頻度を導くことで回折弧内の強度の不均一を記述することができた。上記を実装することで単結晶ガンドルフィ法によるリートベルト解析が可能になる。
(引用文献)
[1] Nakamura, T. et al. (2011) Science, 333, 1113-1116.
[2] Nakamura, T. et al. (2022) Science, 379, eabn8671.
[3] Gandolfi, G. (1964) Mineralogica et Petrographica Acta, 10, 149-156.
[4] 藤田陽平. (2016) 金沢大学卒業論文.
[5] Canfield, D. V. and Sundeen, D. A. (1988) Powder Diffraction, 3(3), 162-164.
[6] Gregorkiewitz, M. (1994) Journal of Applied Crystallography, 27, 855-859.
[7] Zhang, Z. (1980) SCIENTIA SINICA, XXIII(10), 1278-1285.

