講演情報
[R5P-03]Ga-FIBによるCI炭素質コンドライトの大面積断面作製
*松野 淳也1、松本 恵2、治田 充貴1 (1. 京都大学、2. 東北大学)
キーワード:
炭素質コンドライト、FIB、断面試料作製
リュウグウやベンヌ試料などのC型小惑星物質やその類似物質であるCI炭素質コンドライトは極めて脆弱で崩れやすく、繊維状の含水層状ケイ酸塩、サブミクロンスケールの磁硫鉄鉱、有機物、空隙などが複雑に混在している。そのためエポキシ樹脂包埋と機械研磨による断面作製時には、サブミクロンスケールの組織が破壊・変形し、鉱物粒子が脱落してしまう。集束イオンビーム加工装置(FIB)は任意領域を高精度に加工でき、TEM試料作製など数十µm程度の局所加工に広く用いられている。一方で、最も普及しているGaイオンビームでは加工レートに限界があるため、数百µm級の大面積断面作製への応用例は少ない。また、複合材料や凹凸のある表面、大面積の加工時には、カーテニングと呼ばれる筋状の加工アーチファクトが問題となる。Rocking Stageの導入でカーテニングが防止できるものの、既設装置への導入にはコストや適合性が課題となる。本発表では、汎用GaビームFIBのステージの傾斜・回転とスキャンローテーションのみを利用し、樹脂包埋のない不定形の約1mmの炭素質コンドライト欠片に対し、幅約300 µmの大面積断面を作製できたので、報告する。実験は京都大学化学研究所のFIB-SEM(JIB-4700F、日本電子)を用いた。試料にはオルゲイユ隕石(CIコンドライト)を使用し、インジウム箔とカーボンテープにてステージへ固定して加工を行った。試料表面から約300 µmの箇所を目的断面とした。まず高ビーム電流で約250 µmを粗加工し、その後、照射電流を段階的に低下させながら仕上げ加工を行った。また、加工途中では、カーテニングを低減するため、ステージの傾斜と回転、FIBのスキャンローテーションと加工面追尾を実施した。約2日間の加工により、幅約300 µmの断面を作製することができた。SEM-BSE観察にて、断面縁部には局所的なカーテニングが認められたものの、CIコンドライトに特徴的な繊維状の含水層状ケイ酸塩、サブミクロンスケールの磁硫鉄鉱、有機物、空隙などの微細組織を良好に観察することができた。本手法の特徴は、樹脂包埋を必要とせず、不定形試料へ直接適用できること、FIB観察下で任意領域を高精度に選択できること、さらに加工途中の位置補正が可能であることである。また本手法は、Broad Ion Beam(BIB)加工法(比較的低加速電圧(数kV)のArイオンビームも用いた広域断面試料作製手法で、Cross Polisherと呼ぶこともある)と比較すると、不定形試料への適用や目的断面の精密な位置決めという点で有効である。つまり、X線CTなどにより事前に決定した任意断面を精密に露出させる用途にも有効である。
