第64回全国学生相談研修会

小講義1

T1 こども・若者の自殺とその予防(研修領域D)

講師 末木 新(和光大学)

国における自殺対策の本格化(2006年:自殺対策基本法、2007年:自殺総合対策大綱)以降、大学生の自殺者数は右肩下がりであったが、2018年頃より増加に転じた。大学生のみならず、近年、我が国ではこども・若者(10~20代)の自殺者数が増加しており、2025年の自殺対策基本法の改正ではこどもの自殺対策の強化が焦点となった。それでは、大学生を中心に、こども・若者の自殺を予防するために我々はどうすれば良いのであろうか。そこで、ここでは、こども・若者の自殺の現状、自殺の発生プロセスや危険因子、自殺予防方法についての概要を示し、大学生の自殺を防ぐための基礎知識を提供することを目的とした講義を行う。 

 

講師紹介:末木 新(すえき はじめ)

2012年東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程修了。公認心理師、臨床心理士。現職、和光大学現代人間学部教授。第17回日本心理学会国際賞(奨励賞)受賞。著書(単著)に『シン・自殺論』(金剛出版, 2026)、『自殺学入門』(金剛出版, 2020)他。

 

T2 発達障害のある大学生の支援(研修領域D)

講師 大島 郁葉(千葉大学)

発達障害のある大学生は、高校までとは異なる主体的な学習環境に適応できず、困難を抱える場合がある。しかし、大学生まで未診断・未支援で過ごしてきた学生の中には、「社会的カモフラージュ」によって困りごとが見えにくく、支援につながりにくい者も少なくない。近年の研究では、思春期以降にこうした傾向が強まる可能性も示されている。本講義では、社会的カモフラージュの特徴を解説し、支援者が発達障害をどのように理解し受け止めるべきかについて考察する。 

 

講師紹介:大島 郁葉(おおしま ふみよ)

千葉大学子どものこころの発達教育研究センター教授。臨床心理士・公認心理師。自閉スペクトラム症の社会的な受け入れと自閉症者の心理社会的ストレスの変動を研究しており、その一部に社会的カモフラージュも含まれる。

 

T3 学生相談に活かす精神分析の知と技法(研修領域B)

講師 戸谷 祐二(明治学院大学)

学生相談の目的は青年期にある学生としての適応の支援ですが、私はしばしば彼らの中の乳幼児的部分にも目を向けます。「教室に入るのが不安」という 訴えに、大人の集団に放り込まれた幼児の不安を想像するのです。これは青年期における課題や適応と子どもとしてのニーズや不安を複眼的に捉え、立体的に理解することで、自我をより深く丁寧に抱え、支持し、両者の改善や安定を 促すことができると考えるからです。本講座では、乳幼児的部分を扱う精神分析の理論、技法(乳幼児的心性、自我支持、抱える環境など)と学生相談とのコラボレーションによる複眼的、立体的な理解に基づく面接、連携、危機マネジメントなどについて実践的にお話しします。

 

講師紹介:戸谷 祐二(とだに ゆうじ)

明治学院大学学生相談センターカウンセラー(前主任カウンセラー)。日本精神分析学会認定心理療法士、臨床心理士、公認心理師。学生相談に携わり約 30 年、精神分析的心理療法の実践はさらに長くなります。精神分析的な支援が学生の皆さんの、そして学生相談の礎の一つになるとよいなと思っています。