第18回日本てんかん学会関東甲信越地方会

会長挨拶

第18回日本てんかん学会関東甲信越地方会
会長  菅野 秀宣
(順天堂大学 脳神経外科)

 “てんかん学”とはなんと難しい学問なのだろう。疫学、症候学、脳波学はもちろんのこと、画像診断学、薬理学、機能解剖、外科学、発達、精神、福祉、社会経済学等々、勉強すべきことのなんと多い事か。この難解な学問とその学問に裏付けられた診療は、偉大なる先人達によりゆっくりとではあるが確実に進化してきた。てんかん診療においての治療ゴールは単に発作を止めれば良いというものではないようだ。てんかんをもつ人それぞれでゴールが異なっているから、またまた難しい。我々はevidenceを基盤とした治療を行いながらもnarrativeな要素を考慮する必要がある。
 時代は画像や脳波を定量的に解析するようになってきた。さらには人工知能も導入しようとしている。人工知能と言えばさぞかし立派なものの様に聞こえるが、人工知能は過去のevidenceと照らし合わせ、より確率の高い結果を示しているに過ぎない。そのevidenceを作ってきたのは我々医師であり研究者である。また、人工知能にはnarrative based medicineは出来ない。どのような点に注目をすべきかといったアイディアは、1例1例を誠実に診察し、診断をつけ、治療を行った経験から生まれてきた。勿論、時にnarrativeな要素も加えて考えられてきた。我々は先輩より一人の患者さんを大切に診療する事を教えられた。このことはyoung epileptologistsにも永遠に継承されることであろう。このNew generationらは新しいアイディアを出し、必ず現在の治療成績を超える結果を出していく。私は世代を超えた者達が新しい知見を生み出す喜びを共有できるよう本会のテーマを“てんかん診療のNew generation”とした。本会で1例1例の症例を真剣に検討し、新しいアイディアを出してもらいたい。また、リーダー達の基調講演より研究者マインドを感じていただきたい。
 
 今回は、皆様に想いが伝わる発表をしていただきたく、また熱さが伝わる議論をしたいため、オンラインは採用せず会場のみの開催と致しました。皆様、順天堂大学が新設した研究棟にぜひいらして下さい。この建物自体も私の気持ちを現しています。