講演情報

[PPS06-P19]間違いだらけの月面の地形名

*佐藤 勲1 (1.宇宙用語研究会)

キーワード:

月の地形、ラテン語、クレーター、日本語訳

1610年にガリレオが望遠鏡で月面を観測して以来、月面の多くの地形がラテン語で命名されてきた。「羅和辞典」でそのラテン語名の意味を調べたところ、日本語で間違って表記されている地形名がたくさんあることが分かった。最大の間違いは、Mare Frigoris(マーレ・フリゴリス)を「氷の海」と訳しているものである。ラテン語ではfrigorisは「寒冷の」という意味であり、氷はgracies(グラキエス)なので、これは「寒さの海」と訳すべきものである。また、Mare Marginis(マーレ・マルギニス)は「緑の海」(みどりのうみ)ではなく「縁の海」(ふちのうみ)の誤植である。

 Tychoクレーターは、神聖ローマ帝国時代のデンマークの天文学者Tycho Baraheにちなんだ名前であるが、この時代のラテン語はドイツ語の影響を受けているため、古典式ラテン語読みの「ティコ」ではなく、「天文・宇宙の辞典」にあるように「ティホ」である。
 また、古代ギリシャなどの人名がギリシャ語形等ではなく、ラテン語形で命名されているために表記が違ってくるものが多数ある。例えば、Platoは「プラトン」ではなく「プラトー」、Ptolemaeusは「プトレマイオス」ではなく「プトレマエウス」などである。

その他は以下の通り。

Lacus Excellentitae は、「優秀の海」ではなく「優位の海」。

Lacus Luxuriae は、「贅沢の湖」ではなく「成長の海」。

Lacus Somniorum は、「夢の湖」ではなく「夢想の湖」

Palus Somni は、「眠りの沼」ではなく「夢の沼」

Sinus Honoris は、「栄光の入り江」ではなく「名誉の入り江」

Montes Recti は、「レクティ山脈」ではなく「直線山脈」

Ripes Recta は、「垂直断崖」ではなく「直線断崖」