講演情報

[ACG66-P04]メコン川流域におけるダムの運用がメコンデルタへの流量および土砂輸送量に与える影響評価

*江尻 幸太1、藤本 寛生2、都築 航太2、手計 太一1 (1.中央大学理工学部、2.中央大学大学院理工学研究科)

キーワード:

浮遊砂濃度、修正Mann-Kendall検定、メコンデルタ、メコン川

1.はじめに
本研究で対象とするメコン川本川には13基のダムが運用されている.2009年には中国国内でXiaowanダムの運用が開始された.Kummuらは,Xiaowanダムの運用が下流域への土砂輸送量を減少させていることを指摘している1).その後,2019年にDon Sahongダム,Xaiyaburiダム,Lower Sesan 2ダムの運用が開始された.
土砂輸送量の減少は,海岸線の後退を引き起こす2)ため,メコンデルタへの土砂輸送量の変化を把握することは極めて重要である.しかし,2019年に運用が開始したダムを含む既設ダム群が,メコンデルタの土砂輸送量に与えた影響については,定量的な評価がされていない.
以上を鑑みて,本研究の目的は,メコンデルタにおける土砂輸送量の長期変化の実態を解明し,ダム運用が土砂輸送量に与えた影響を明らかにすることである.
2.対象領域および使用データ
本研究では,メコンデルタへの土砂輸送量を定義する代表地点としてKratie地点を選定した.同地点はデルタの入り口に位置し,潮汐による影響を受けない地点とされている3).使用データは,Mekong River Commissionが提供するKratie地点における流量と浮遊砂濃度データである.
3.研究方法
土砂輸送量の経年変化を明らかにするため,本研究では次式(1)を用いて土砂輸送量を算出した.
SSL = Q × TSS × 1,000 (1)
ここで,SSLは土砂輸送量(kg/s),Qは流量(m3/s),TSSは浮遊砂濃度(mg/l)である.
Kratie地点における日流量,浮遊砂濃度,土砂輸送量の月ごとの観測データについて修正Mann-Kendall検定4)(以降,修正MK検定)を実施した.1996~2008年を第1期間,1996~2018年を第2期間,1996~2023年を第3期間と定義し,この3期間を比較した.
4.結果
日流量における修正MK検定の結果,第3期間の3月,5月において有意な増加傾向が認められた.次に,浮遊砂濃度における修正MK検定の結果,第3期間の1月,9月,11月において有意な減少傾向が認められた.土砂輸送量における修正MK検定の結果,第3期間の8月,9月,11月において有意な減少傾向が認められた.
これらの結果より,流域内のダム運用に伴い土砂輸送量が段階的に減少していることが明らかになった.
5.まとめ
本研究では,メコン川における土砂輸送量の経年変化を統計的に分析した.修正MK検定を実施した結果,2009年および2019年のダム運用開始以降,8月,9月,11月における土砂輸送量が有意に減少していることが明らかとなった.
今後もメコン川流域において新たなダム開発が計画されているため,さらなる土砂輸送量の問題が大きくなる可能性が極めて高い.今後は流量変化のみならず,土砂輸送特性への影響を十分に考慮した設計および運用方策を検討することが重要である.
参考文献
1)Kummu, M., Lu, X.X., Wang, J., & Varis, O.: Hydropower development and sediment starvation in the Mekong River basin, Global Environmental Change, 2010.
2) Anthony, E. J., Brunier, G., Besset, M., Goichot, M., Dussouillez, P., & Nguyen, V. L.: Linking rapid erosion of the Mekong River delta to human activities, Scientific Reports, Vol. 5, 14745, 2015.
3)Manh, N. V., Dung, N. V., Hung, N. N., Merz, B. and Apel, H.: Large-scale suspended sediment transport and sediment deposition in the Mekong Delta, Hydrology and Earth System Sciences, Vol. 18, pp. 3033-3053, 2014.
4)Hamed, K. H. and Rao, A. R.: A modified Mann–Kendall trend test for autocorrelated data, Journal of Hydrology, Vol.204, pp.182–196, 1998.