講演情報
[O12-P04]ダムの洪水調節の柔軟化を目指した予測雨量によるダム流入量推定の研究
*柴田 智明1、*佐藤 史哉1、*塩田 想來1、*中村 廉1 (1. 茨城県立日立第一高等学校)
キーワード:
ダム、洪水調節、予測雨量
1. 緒言
私たちはダムがとても好きである。この関心を出発点として、本研究では、近年激甚化・頻発化する豪雨災害への対策の重要性が高まっている現状を踏まえ、ダムの有効活用による洪水被害軽減を最終目的とする。もともとダムには「洪水調節」という、下流の洪水を防ぐ役割があり、現在、その操作方法は洪水時のダム流入量のみを用いて操作を行うものになっている。この現在の方法はどんな雨においても一定の洪水調節効果が得られるというメリットがある1)。しかし一方で、ダム流入量の変化を確認後にしか、ダム操作をすることができないことに加え、超過洪水に対応することは難しいというデメリットがある。そこで、我々は近年精度が高まっている予測雨量をダム操作に活用することで、さらに柔軟に洪水に対応できるのではないかと考えた。そのため本研究では、予測雨量をダム操作に活用するために、予測雨量によってダム流入量を推定することを目的とした。
2. 方法
現在までに、図1、2より、ダムより上流にある雨量観測点で観測された雨量とダム流入量にはタイムラグがあることと、そのタイムラグは洪水ごとに異なること、また、まとまった雨が降ってもダム流入量に変化が見えにくいことがあることが分かっている。そのため、ここからは(1)タイムラグの全容解明、(2)タンクモデル法による詳細な流出解析、(3)ダム操作の再現を行う予定である。
(1)タイムラグについて
タイムラグの特徴分析のため、次の①~③の操作を行った。① 横軸を雨量、縦軸を降雨開始から一定時間を遅らせたダム流入量にしてグラフを作成し、相関を求める(図3)。② 縦軸を降雨開始から30分後、1時間後、1.5時間後、…のように30分ずつ遅らせたダム流入量として相関を求めた。③ ②の結果、降雨開始後から1時間後までは相関が弱く、1時間後から相関が強まった。そのため、縦軸を降雨開始から1時間後以降を、1時間後、1時間10分後、1時間20分後、・・・のように、遅らせる時間を10分ずつと短くして、3時間後までのグラフを作成し、その相関を求めた。③で作成したグラフのうち、相関が最も強いグラフの時、雨量と流入量の増加が一致していると判断し、縦軸の時間の遅れがタイムラグと一致するとした。
(2)タンクモデル法による詳細な流出解析について
流域の土壌による浸透も考慮するため、土壌への浸透がよく反映され、降雨量と土壌吸収量から流出量を求めることができるタンクモデル法を採用した。この流出解析手法により2019年10月に起こった東日本台風による洪水の時のデータで計算流入量を算出し、実績流入量と比較した。
3. 結果・考察
① の結果は図4,5の通りである。分析した7回の洪水のうち3回の洪水において相関係数が最も高い時間差は約1.5時間前後であることが分かった。しかし、ほかの4回の洪水については、時間差1時間から3時間にかけて長時間相関係数の高い洪水もあるため、タイムラグには2種類の場合があるのではないかと考察をした。
②の結果は図6の通りである。グラフの特にオレンジ色の四角で囲んだ部分について、タンクモデル法は土壌の浸透を考慮しているにも関わらず、計算流入量が実績と比べて増加した。この原因として降雨前後の土壌の状態が関係していることが考えられる。
4. 結論
雨量観測点で雨量が観測されてから水沼ダムの流入量に反映されるまでのタイムラグは1.5時間前後のものと、そうでないものがあると結論付けた。また、タンクモデル法による流入量予測は可能であるが、土壌による浸透をさらに考慮しなければならないため、改善の余地があると結論付けられる。
5. 今後の展望
今後はタイムラグのより詳細な分析のため、降雨強度ごとに分けて相関を求めることや、降雨時までの総雨量によって場合分けして相関を求めることを予定している。また、ダム操作方法の柔軟化のためにはダム操作をコンピュータ上で再現し、シミュレーションを行う必要があるため、その再現も行う予定である。それに加え、その方法の実現可能性を検証するための実験ダム模型も製作中であり、それを用いて模型実験を行う予定である。
謝辞
本研究にご支援ご指導くださった、茨城県庁河川課の皆様、高萩工事事務所の皆様に深謝したします。本研究は日立市環境教育支援事業の支援を受けています。
参考文献
1)“国総研資料第670号”.国土交通省国土技術総合研究所.2025-09-17.
https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0670.htm,(2025-09-18)
私たちはダムがとても好きである。この関心を出発点として、本研究では、近年激甚化・頻発化する豪雨災害への対策の重要性が高まっている現状を踏まえ、ダムの有効活用による洪水被害軽減を最終目的とする。もともとダムには「洪水調節」という、下流の洪水を防ぐ役割があり、現在、その操作方法は洪水時のダム流入量のみを用いて操作を行うものになっている。この現在の方法はどんな雨においても一定の洪水調節効果が得られるというメリットがある1)。しかし一方で、ダム流入量の変化を確認後にしか、ダム操作をすることができないことに加え、超過洪水に対応することは難しいというデメリットがある。そこで、我々は近年精度が高まっている予測雨量をダム操作に活用することで、さらに柔軟に洪水に対応できるのではないかと考えた。そのため本研究では、予測雨量をダム操作に活用するために、予測雨量によってダム流入量を推定することを目的とした。
2. 方法
現在までに、図1、2より、ダムより上流にある雨量観測点で観測された雨量とダム流入量にはタイムラグがあることと、そのタイムラグは洪水ごとに異なること、また、まとまった雨が降ってもダム流入量に変化が見えにくいことがあることが分かっている。そのため、ここからは(1)タイムラグの全容解明、(2)タンクモデル法による詳細な流出解析、(3)ダム操作の再現を行う予定である。
(1)タイムラグについて
タイムラグの特徴分析のため、次の①~③の操作を行った。① 横軸を雨量、縦軸を降雨開始から一定時間を遅らせたダム流入量にしてグラフを作成し、相関を求める(図3)。② 縦軸を降雨開始から30分後、1時間後、1.5時間後、…のように30分ずつ遅らせたダム流入量として相関を求めた。③ ②の結果、降雨開始後から1時間後までは相関が弱く、1時間後から相関が強まった。そのため、縦軸を降雨開始から1時間後以降を、1時間後、1時間10分後、1時間20分後、・・・のように、遅らせる時間を10分ずつと短くして、3時間後までのグラフを作成し、その相関を求めた。③で作成したグラフのうち、相関が最も強いグラフの時、雨量と流入量の増加が一致していると判断し、縦軸の時間の遅れがタイムラグと一致するとした。
(2)タンクモデル法による詳細な流出解析について
流域の土壌による浸透も考慮するため、土壌への浸透がよく反映され、降雨量と土壌吸収量から流出量を求めることができるタンクモデル法を採用した。この流出解析手法により2019年10月に起こった東日本台風による洪水の時のデータで計算流入量を算出し、実績流入量と比較した。
3. 結果・考察
① の結果は図4,5の通りである。分析した7回の洪水のうち3回の洪水において相関係数が最も高い時間差は約1.5時間前後であることが分かった。しかし、ほかの4回の洪水については、時間差1時間から3時間にかけて長時間相関係数の高い洪水もあるため、タイムラグには2種類の場合があるのではないかと考察をした。
②の結果は図6の通りである。グラフの特にオレンジ色の四角で囲んだ部分について、タンクモデル法は土壌の浸透を考慮しているにも関わらず、計算流入量が実績と比べて増加した。この原因として降雨前後の土壌の状態が関係していることが考えられる。
4. 結論
雨量観測点で雨量が観測されてから水沼ダムの流入量に反映されるまでのタイムラグは1.5時間前後のものと、そうでないものがあると結論付けた。また、タンクモデル法による流入量予測は可能であるが、土壌による浸透をさらに考慮しなければならないため、改善の余地があると結論付けられる。
5. 今後の展望
今後はタイムラグのより詳細な分析のため、降雨強度ごとに分けて相関を求めることや、降雨時までの総雨量によって場合分けして相関を求めることを予定している。また、ダム操作方法の柔軟化のためにはダム操作をコンピュータ上で再現し、シミュレーションを行う必要があるため、その再現も行う予定である。それに加え、その方法の実現可能性を検証するための実験ダム模型も製作中であり、それを用いて模型実験を行う予定である。
謝辞
本研究にご支援ご指導くださった、茨城県庁河川課の皆様、高萩工事事務所の皆様に深謝したします。本研究は日立市環境教育支援事業の支援を受けています。
参考文献
1)“国総研資料第670号”.国土交通省国土技術総合研究所.2025-09-17.
https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0670.htm,(2025-09-18)
