講演情報

[O12-P27]海面水温が東北地方における局地的大雨の発生頻度および強度に及ぼす影響

*向笠 祥史1、*鈴木 陽向1、荒川 倫也1、板橋 恵愛1、八嶋 壮介1 (1. 宮城県多賀城高等学校)

キーワード:

海面水温、局地的大雨、AI cress

1.背景
 日本では豪雨災害が頻発・激甚化しており、2015~2024年の10年間では1976~1985年の10年間と比べ約1.5倍に増加している1)。豪雨の被害が比較的少なかった東北地方でも増加しており、2019年の東日本台風や平成27年の関東・東北豪雨では甚大な被害がもたらされた2)。また、日常的な局地的大雨(ゲリラ豪雨)も増加しており2015~2024年の10年間では1976~1985年の10年間と比べ約1.9倍増加している。原因として、先行研究では地球温暖化に伴う水蒸気量の増加が挙げられている3)

2.目的
 背景より、本研究では、地球温暖化の影響による海面水温の上昇に焦点を当て、「海面水温が上昇することによって、局地的大雨の発生回数が増加し、降水強度が大きくなる」という仮説を立て、その仮説を明らかにすることを目的とする。

3.手法
【調査1】
 全国と東北地方それぞれにおいて、1991年~2020年の海面水温データの偏差をx、同期間の局地的大雨の発生回数を設置されているアメダス雨量計の個数で割った値をyとして、相関係数を算出し、回帰分析を行った。
【調査2】
 過去の気象事例の海面水温や地形関係の有無等の条件を変えて降水強度等の変化をシミュレーションすることができるソフトウェア「Web AI cress」を用い、2019年10月の台風19号の気象条件を再現した。解析範囲は北緯36〜42度、東経138〜143度、時間は12日21時から13日9時とした(図3)。海面水温を21℃と31℃に設定し、降水強度および風向きの変化を比較した。

4.結果
 調査1の結果、相関係数は全国で0.56、東北地方で0.50となり、正の相関が確認された。よって、海面水温の上昇に伴い局地的大雨の発生回数が増加する傾向が示された(図1、図2)。
 調査2の結果、海面水温31℃の場合、21℃の場合と比較し、最大降水強度は約15mm/hとなり、5mm/h以上の降水域も拡大した。また、三陸沖で風向きの収束が強まり、その周辺で降水強度の増加が顕著に見られた(図4、図5)。

5.考察
 以上の結果から、海面水温の上昇は局地的大雨の発生頻度の増加に寄与するとともに、降水強度を高めることで豪雨の規模を拡大させる要因の一つであると考えられる。特に東北地方における近年の大雨被害の増加には、海面水温の上昇が関与している可能性が高い。

6.結論
 海面水温上昇により、局地的大雨の発生回数が増加し、降水強度が大きくなると言える。

7.今後の展望
 本研究で得られた相関は中程度にとどまっており、豪雨発生には他の要因(大気の不安定度や地形など)も影響していると考えられる。また、シミュレーションではグラフ条件の統一が困難であり、視覚的な比較に課題が残った。また、今後は他事例での検証や解析精度の向上が必要である。別の事例でシミュレーションを行い、より信頼性のある研究にしていくと共に、東北地方の内陸部や長野県、岐阜県等の海に面していないところでの海面水温の影響を調べ、日本の豪雨被害軽減に寄与していきたい。

謝辞
 ご指導いただいた東北大学の伊藤純至先生、岩手大学の名越利幸先生、防災科学技術研究所の前坂剛先生、仙台管区気象台の皆様に深く感謝申し上げます。

【参考文献】
1) 仙台管区気象台. 東北地方のこれまでの気候の変化. https://www.data.jma.go.jp/sendai/knowledge/climate/region/tohoku/observation.html
(2025/7/23)
2)気象庁. 海面水温の長期変化傾向. https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/shindan/a_1/japan_warm/cfig/warm_area.html?area=all#title (2025/7/23)
3)気象庁. 大雨や猛暑日(極端現象)のこれまでの変化. https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html (2025/7/23)