講演情報

[O12-P93]遠州地方における空っ風の強風化に及ぼす地形の影響

水谷 架士羽1、宮野 智矢1、黒田 立輝1、*平松 侑大1、山内 希一1、大森 奏1、阿知波 ハル1 (1. 浜松学芸中学校・高等学校 サイエンス部)

キーワード:

季節風、地形モデル

11.研究の目的
浜松を中心とする遠州地方では、冬季に「空っ風」と呼ばれる強い北西の季節風が吹く。一般的な定説では、冬季の季節風が山脈を越えて吹き下ろすフェーン現象に関連した乾燥した風と説明される。しかし、静岡県内では地点によって風向に大きな差異があり、特に浜松周辺では西寄りの風が極めて強く卓越するという特徴がある。
本研究の目的は、この遠州地方特有の強い空っ風の成因を、気象データの解析、風洞実験、および数値シミュレーションという多角的な側面から明らかにすることである。
2.データと手法
(1) 気象データの解析
気象庁の公開データより、滋賀県から静岡県にかけての5県22地点の観測データ(過去20年間の1月〜3月の平年値)を収集した。各地点の平均風速と最多風向を抽出し、国土地理院の赤色立体地図上に描画することで、地形と風の流れの関係を可視化した。
(2) 風洞実験による検証
粘土で作製した山地や地形模型を用いて風洞実験を行い、30度刻みで風速と風向を計測した。測定にはハンドヘルドポータブル風速計(Estink社製:GM8903)を使用した。四角柱、三角柱、かまぼこ型の模型を横たえた場合と、円柱や四角柱を縦に立てた場合の風速・風向を比較し風洞装置の妥当性を検証した。
次に、地形模型を用いた実験を行った。モデルは単純なモデルと、三河山地を後退させた改良型モデル、さらに中部地方の地形を粘土で精緻に再現した複雑なモデルの合計7種類を作製した。複雑なモデルでは、鈴鹿山脈の除去や濃尾平野の埋立などの地形処理を施し、浜松地点での風速(Estink社製GM8903で計測)と風向の変化を記録した。
(3) 数値シミュレーション
FreeCADで風洞実験で行った単純なモデルと改良型モデルを作成し、OpenFOAM12およびXsimを用いて数値計算による検証を行った。
3.結果
気象データ解析の結果、濃尾平野から伊勢湾にかけては北西風が卓越しているが、浜松では西北西、御前崎では西風が卓越しており、風向が地形配置(半盆地・山地)と一致していることが示された。
風洞実験において、単純なU字型モデルでは出口で風速が増加し、改良型モデルでは地表付近で反時計回りの渦が発生した。複雑な地形モデルを用いた実験では、浜松地点の風速は鈴鹿山脈を削った場合を除き、他の地形改変(三河山地の後退など)によって有意に低下した。特に風向については、三河山地を削ったときのみ大きな変化が見られた。
シミュレーションの結果も風洞実験と同様であり、U字型では直進する気流が、三河山地を模した改良型では回り込むような流れが確認された。
4.考察
本研究の結果、浜松市で冬季に西寄りの強い空っ風が吹くのは、濃尾平野や伊勢湾を吹き抜けてきた北西の季節風が、三河地方の山地に沿って曲げられることにより、強い西風に変化して卓越していたことが明らかになった。
5.参考文献
JAXA YAC手作りの風洞でつばさの実験を使用!-ミニ風洞-
気象庁HP
西暁史・日下博幸(2015)局地風「空っ風」の強風域と山岳形状の関係.日本気象学会大会講演予講集108