講演情報
[PPS12-07]エウロパ海底模擬環境下での鉱物触媒によるオリゴマー生成
*山本 千早1、篠崎 彩子2、三村 耕一1 (1.名古屋大学大学院 環境学研究科、2.北海道大学 理学研究院)
キーワード:
エウロパ、オリゴマー化、鉱物の触媒作用、高圧実験
エウロパは厚い氷殻の下に深さ約100 kmの海洋を有し、その海底は蛇紋岩化した岩石からなり、約150 MPaの高圧環境にあると考えられている (e.g. Khurana et al. 1998; Vance et al., 2007; Marion et al., 2005) 。その海底には、彗星などによって供給された有機物や、地球深海に類似した熱水系が存在することが示唆されている (e.g. Pierazzo and Chyba, 2001; Teece et al., 2025) 。これらの熱水活動や鉱物触媒作用によって、エウロパ海底は、有機物の重合、ひいては化学進化が促進され得る環境である (e.g. Corliss et al., 1981; Sousa et al., 2013) 。一方で、圧力や含水条件は脱水縮合反応を抑制する (Shock, 1992) 。エウロパ海底では、これらの促進あるいは抑制的要因が複合的に作用すると考えられるため、実際、化学進化がどの程度進行するかは不明である。模擬実験を通じて温度・鉱物触媒・圧力の相互作用下で有機物の重合が進行し得るかを検証し、化学進化の可能性を評価することが必要となる。
本研究は、エウロパ海底を模擬した条件下でのL-アラニンの非生物的オリゴマー化を調べた。模擬実験の出発物質は、MgSO4(60 mM)、Na2SO4(20 mM)、NaCl(15 mM)およびL-α-アラニン(100 mM)の混合水溶液と蛇紋岩粉末の混合物であり、エウロパの海洋組成や岩石組成の推定値を参考に調製した (Zolotov and Shock, 2001; Thompson et al., 2021) 。出発物質をPTFE製ダプルカプセルに封入し、5、50、125℃の各温度で、それぞれ2、4、10日間、150 MPaでピストンシリンダーを用いて保持した。反応後、試料に内部標準溶液を添加し、LC-MS/MS分析で生成物と残存アラニンを定量した。
実験結果は、圧力による阻害効果にもかかわらず、蛇紋岩を構成する鉱物の表面が、アラニルアラニンやトリアラニンなどの直鎖状オリゴマー、そして環状オリゴマーである2,5-ジケトピペラジンの形成を促進することを明らかにした。温度はオリゴマーの形成効率と安定性の両方に影響を与え、低温から中温条件(5℃、50℃)では直鎖状オリゴマーが環状オリゴマーに比べて多く得られた。特に、50℃では、アラニルアラニンとトリアラニンが実験期間全体を通して検出された。一方、2,5-ジケトピペラジンへの環化は10日目のみ観察され、その収率は直鎖アラニンに比べて有意に低かった。これらの結果は、低温~中温条件では脱水による分子内環化が抑制され、直鎖状オリゴマーの生成や伸長が進んだことを示唆している。一方、高温条件(125℃)では、全ての実験時間で2,5-ジケトピペラジン形成が促進された。125℃における実験時間に対する2,5-ジケトピペラジンの収率はアラニルアラニンと同様の傾向を示し、2日目までは急速に形成し、以降は迅速な分解が認められた。
本研究の結果は、単一の温度環境ではオリゴマーの高い生成効率と長期的な安定性が両立し得ないことを意味している。温度勾配に伴う熱水対流により、高温域で生成したオリゴマーが低温域へ輸送され保存されるサイクルが成立する複合的な環境で化学進化が進むと考えられる。本研究は、鉱物触媒によるオリゴマー化がエウロパの海底で起こり得ること、そして温度勾配と水と岩石の相互作用の組み合わせが、生命誕生前の有機分子の重合を引き起こす可能性を示唆するものである。
本研究は、エウロパ海底を模擬した条件下でのL-アラニンの非生物的オリゴマー化を調べた。模擬実験の出発物質は、MgSO4(60 mM)、Na2SO4(20 mM)、NaCl(15 mM)およびL-α-アラニン(100 mM)の混合水溶液と蛇紋岩粉末の混合物であり、エウロパの海洋組成や岩石組成の推定値を参考に調製した (Zolotov and Shock, 2001; Thompson et al., 2021) 。出発物質をPTFE製ダプルカプセルに封入し、5、50、125℃の各温度で、それぞれ2、4、10日間、150 MPaでピストンシリンダーを用いて保持した。反応後、試料に内部標準溶液を添加し、LC-MS/MS分析で生成物と残存アラニンを定量した。
実験結果は、圧力による阻害効果にもかかわらず、蛇紋岩を構成する鉱物の表面が、アラニルアラニンやトリアラニンなどの直鎖状オリゴマー、そして環状オリゴマーである2,5-ジケトピペラジンの形成を促進することを明らかにした。温度はオリゴマーの形成効率と安定性の両方に影響を与え、低温から中温条件(5℃、50℃)では直鎖状オリゴマーが環状オリゴマーに比べて多く得られた。特に、50℃では、アラニルアラニンとトリアラニンが実験期間全体を通して検出された。一方、2,5-ジケトピペラジンへの環化は10日目のみ観察され、その収率は直鎖アラニンに比べて有意に低かった。これらの結果は、低温~中温条件では脱水による分子内環化が抑制され、直鎖状オリゴマーの生成や伸長が進んだことを示唆している。一方、高温条件(125℃)では、全ての実験時間で2,5-ジケトピペラジン形成が促進された。125℃における実験時間に対する2,5-ジケトピペラジンの収率はアラニルアラニンと同様の傾向を示し、2日目までは急速に形成し、以降は迅速な分解が認められた。
本研究の結果は、単一の温度環境ではオリゴマーの高い生成効率と長期的な安定性が両立し得ないことを意味している。温度勾配に伴う熱水対流により、高温域で生成したオリゴマーが低温域へ輸送され保存されるサイクルが成立する複合的な環境で化学進化が進むと考えられる。本研究は、鉱物触媒によるオリゴマー化がエウロパの海底で起こり得ること、そして温度勾配と水と岩石の相互作用の組み合わせが、生命誕生前の有機分子の重合を引き起こす可能性を示唆するものである。
