講演情報
[PPS12-08]土星リングへの微小隕石衝突によって生成する蒸気雲の化学進化
*落合 葉子1、兵頭 龍樹1,3,4,5、井田 茂1、庄司 大悟2 (1.東京科学大学 地球生命研究所、2.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、3.Université Paris Cité, Institut de Physique du Globe de Paris, CNRS、4.立教大学大学院人工知能科学研究科、5.SpaceData Inc.)
キーワード:
土星リング、衝突過程、化学反応シミュレーション、有機化学
土星リングへの微小隕石の高速衝突は、高温・高圧(~104K, ~100 GPa)の蒸気雲を生成する。これらの蒸気雲は、急速に膨張する過程で化学進化を遂げるが、その結果生成される化学種については、これまで十分に調べられていない。
本研究では、我々の先行研究で開発した化学反応シミュレーションモデルを用いて、土星のリング粒子への微小隕石衝突によって生じる蒸気雲内の化学反応の再現を行う。本モデルは、モンテカルロ法を用い、各ステップで考えられるすべての反応候補の中から、反応速度によって重み付けされた確率に基づき反応選択を繰り返す。そのため、反応ネットワークや生成物をあらかじめ定義せずに、反応経路を前方的に探索することが可能となる。
本研究では、直径10 μmのIDP組成の微小隕石が、速度30 km/sでリング粒子に衝突する場合を想定し、衝突後の炭素、水素、酸素、窒素間の気相反応に注目する。蒸気雲の温度・圧力進化プロファイルとして4種類を設定し、それぞれについてターゲット由来の蒸気と衝突体由来の蒸気の混合比を3通り変え、シミュレーションを行った。
シミュレーションの結果からは、蒸気雲の最終的な主要化学種としてHラジカル、CO、H₂、H₂Oなどが生成されることが示された。このような蒸気雲の最終組成の特徴を説明するために、本研究では冷却および減圧によって反応速度がどのように変化するのかを解析した。生成直後の蒸気雲は、高温高圧のため反応速度が十分に大きく、熱力学的平衡に達するが、冷却減圧に伴い反応速度が小さくなると、ある時点で反応が停止(クエンチ)し、蒸気雲の組成がそれ以上変化しなくなる。本解析からは、今回の衝突条件では約3000 Kでこのような反応のクエンチが起きることが示され、シミュレーションで得られた、高温生成物を保持した最終組成と整合的な結果となった。さらに、本研究の結果からは、高温でのクエンチによって、蒸気雲中の炭素原子のほとんどは最終的にCOとなることが示された。また、水蒸気の混合比が低い条件では、アセチレンをはじめとした、炭素原子を2つ以上含む分子も相当量生成され、土星リングにおける有機分子形成の可能性が示唆された。
本研究の結果は、土星リングへの微小隕石衝突が、COや有機物前駆体に富む蒸気を生成することを示しており、これはカッシーニ探査機によって観測された、リングから土星大気への赤道流入物質の組成と整合的である可能性を示唆している。
本研究では、我々の先行研究で開発した化学反応シミュレーションモデルを用いて、土星のリング粒子への微小隕石衝突によって生じる蒸気雲内の化学反応の再現を行う。本モデルは、モンテカルロ法を用い、各ステップで考えられるすべての反応候補の中から、反応速度によって重み付けされた確率に基づき反応選択を繰り返す。そのため、反応ネットワークや生成物をあらかじめ定義せずに、反応経路を前方的に探索することが可能となる。
本研究では、直径10 μmのIDP組成の微小隕石が、速度30 km/sでリング粒子に衝突する場合を想定し、衝突後の炭素、水素、酸素、窒素間の気相反応に注目する。蒸気雲の温度・圧力進化プロファイルとして4種類を設定し、それぞれについてターゲット由来の蒸気と衝突体由来の蒸気の混合比を3通り変え、シミュレーションを行った。
シミュレーションの結果からは、蒸気雲の最終的な主要化学種としてHラジカル、CO、H₂、H₂Oなどが生成されることが示された。このような蒸気雲の最終組成の特徴を説明するために、本研究では冷却および減圧によって反応速度がどのように変化するのかを解析した。生成直後の蒸気雲は、高温高圧のため反応速度が十分に大きく、熱力学的平衡に達するが、冷却減圧に伴い反応速度が小さくなると、ある時点で反応が停止(クエンチ)し、蒸気雲の組成がそれ以上変化しなくなる。本解析からは、今回の衝突条件では約3000 Kでこのような反応のクエンチが起きることが示され、シミュレーションで得られた、高温生成物を保持した最終組成と整合的な結果となった。さらに、本研究の結果からは、高温でのクエンチによって、蒸気雲中の炭素原子のほとんどは最終的にCOとなることが示された。また、水蒸気の混合比が低い条件では、アセチレンをはじめとした、炭素原子を2つ以上含む分子も相当量生成され、土星リングにおける有機分子形成の可能性が示唆された。
本研究の結果は、土星リングへの微小隕石衝突が、COや有機物前駆体に富む蒸気を生成することを示しており、これはカッシーニ探査機によって観測された、リングから土星大気への赤道流入物質の組成と整合的である可能性を示唆している。
