講演情報
[PPS12-12]リュウグウおよびCIコンドライトの岩相多様性と熱進化モデルに基づく母天体内部構造と進化タイムスケールの制約
*山﨑 奏次郎1、三河内 岳1、Zolensky Michael2 (1.東京大学、2.NASA Johnson Space Center)
キーワード:
リュウグウ、CIコンドライト、熱進化モデル
はじめに:本研究は、リュウグウ試料および CI コンドライトの母天体の熱進化を理解することを目的とする。これらの物質は、初期太陽系における始原的な小惑星母天体の熱的・化学的進化を記録した重要な試料である [1-3]。構成鉱物および水質変成の程度に基づき、岩相は I〜VI の6タイプに分類される。タイプ I はカンラン石に富み最も変成が弱く、タイプ II は少量のカンラン石と輝石を含み比較的軽度の水質変成を示す。タイプ III は最も一般的な岩相で、炭酸塩としてドロマイトのみを含み中程度の変成を示す。タイプ IV はドロマイトとマグネサイトを含み、より進行した変成度を示す。タイプ V は大きな炭酸塩集合体を特徴とし、タイプ VI は炭酸塩をほとんど含まない岩相である [4]。リュウグウ試料と CI コンドライトで岩相の種類と割合がよく一致することから、両者は初期太陽系において類似した内部構造をもつ母天体に由来し、その後の衝突破壊と再集積によってリュウグウのようなラブルパイル天体が形成されたと考えられる [1]。
手法:本研究では、母天体の集積過程と熱進化を考慮した熱進化モデルを構築した。母天体の質量成長は微惑星の面密度と衝突断面積に基づく式から計算し [5]、熱進化は一次元球対称の熱拡散方程式を用いて評価した。その際、26Al の放射性崩壊熱、氷の融解潜熱、蛇紋石化による反応熱を考慮した。衝突加熱および放射冷却は表面境界条件として与えた。各位置で到達した最高温度に基づいて岩相タイプを割り当て、母天体内部の岩相分布を決定した (表1)。
結果と考察:母天体の内部構造を制約するため、バルク水(氷)/岩石比(W/R)、集積開始時刻、原始母天体サイズの三つの主要パラメータを系統的に変化させた(図1)。半径約10 km の小天体では 26Al による加熱が不十分で温度上昇が小さく、低温型の岩相 I・II が支配的となる。一方、50–100 km の天体では集積が長時間にわたり進行するため、早期に集積した物質は強く加熱されるが、後期に集積した物質は比較的低温のまま残る。その結果、内部領域に温度差が生じ、多様な岩相が共存する(図2)。
集積開始時刻も重要な要素であり、CAI形成後約百万年の早期に集積が始まると 26Al による発熱が過剰となり、内部が過度に加熱され炭酸塩形成が抑制されるため岩相 VI が支配的となる。逆に約3百万年後と後期に集積が始まる場合には放射性加熱が不十分となり、主として無水的な岩相が形成される。これに対し約1.5〜2百万年後に集積が始まる場合には、加熱が過剰でも不足でもない適度な条件となり、多様な岩相の形成が可能となる。また W/R 比も熱進化に強く影響し、W/R が低いほど岩石割合が高く 26Al 発熱の効果が大きくなるのに対し、W/R が高い場合には岩石成分が小さくなり、26Alの壊変熱は相対的に小さくなる。さらに氷の融解潜熱により温度上昇は抑制される。
結論:以上の結果から、半径約50–100 km、CAI形成後約1.5–2百万年で集積開始、バルク W/R 比 0.6–0.9 程度という条件が、リュウグウおよび CI コンドライトの岩相割合を比較的よく再現することが示された。この条件では 26Al による加熱は過不足なく働き、炭酸塩を含む多様な岩相が単一の母天体内に共存できる。さらに重要な点として、集積は瞬間的ではなく有限時間で進行したと考えられる。段階的集積により早期物質と後期物質の温度差が生じ、内部の岩相不均質が自然に形成される。最終的に、このような50–100 km 規模で揮発性物質に富む母天体が普遍的に形成され、それらが衝突破壊・混合・再集積することでラブルパイル型天体が生じた可能性がある(図3)。本モデルは、リュウグウや CI コンドライト、さらに類似した岩石学的特徴を示すベンヌの母天体に至るまで、集積・加熱・衝突進化を統一的に説明する進化シナリオを提示する。
[1] Nakamura T. et al. (2023), Science 379, 787.
[2] Iizuka, T. et al. (2025) Nature, 450, 525–528.
[3] Yokoyama T. et al., 2022, Science 379, 6634.
[4] Mikouchi, T. et al. (2025) 87th Meteoritical Society Meeting (MetSoc), #5211.
[5] Thommes, E. et al. (2001) Astrophysical Ages and Time Scales, ASP Conference Series, Vol. 245.
手法:本研究では、母天体の集積過程と熱進化を考慮した熱進化モデルを構築した。母天体の質量成長は微惑星の面密度と衝突断面積に基づく式から計算し [5]、熱進化は一次元球対称の熱拡散方程式を用いて評価した。その際、26Al の放射性崩壊熱、氷の融解潜熱、蛇紋石化による反応熱を考慮した。衝突加熱および放射冷却は表面境界条件として与えた。各位置で到達した最高温度に基づいて岩相タイプを割り当て、母天体内部の岩相分布を決定した (表1)。
結果と考察:母天体の内部構造を制約するため、バルク水(氷)/岩石比(W/R)、集積開始時刻、原始母天体サイズの三つの主要パラメータを系統的に変化させた(図1)。半径約10 km の小天体では 26Al による加熱が不十分で温度上昇が小さく、低温型の岩相 I・II が支配的となる。一方、50–100 km の天体では集積が長時間にわたり進行するため、早期に集積した物質は強く加熱されるが、後期に集積した物質は比較的低温のまま残る。その結果、内部領域に温度差が生じ、多様な岩相が共存する(図2)。
集積開始時刻も重要な要素であり、CAI形成後約百万年の早期に集積が始まると 26Al による発熱が過剰となり、内部が過度に加熱され炭酸塩形成が抑制されるため岩相 VI が支配的となる。逆に約3百万年後と後期に集積が始まる場合には放射性加熱が不十分となり、主として無水的な岩相が形成される。これに対し約1.5〜2百万年後に集積が始まる場合には、加熱が過剰でも不足でもない適度な条件となり、多様な岩相の形成が可能となる。また W/R 比も熱進化に強く影響し、W/R が低いほど岩石割合が高く 26Al 発熱の効果が大きくなるのに対し、W/R が高い場合には岩石成分が小さくなり、26Alの壊変熱は相対的に小さくなる。さらに氷の融解潜熱により温度上昇は抑制される。
結論:以上の結果から、半径約50–100 km、CAI形成後約1.5–2百万年で集積開始、バルク W/R 比 0.6–0.9 程度という条件が、リュウグウおよび CI コンドライトの岩相割合を比較的よく再現することが示された。この条件では 26Al による加熱は過不足なく働き、炭酸塩を含む多様な岩相が単一の母天体内に共存できる。さらに重要な点として、集積は瞬間的ではなく有限時間で進行したと考えられる。段階的集積により早期物質と後期物質の温度差が生じ、内部の岩相不均質が自然に形成される。最終的に、このような50–100 km 規模で揮発性物質に富む母天体が普遍的に形成され、それらが衝突破壊・混合・再集積することでラブルパイル型天体が生じた可能性がある(図3)。本モデルは、リュウグウや CI コンドライト、さらに類似した岩石学的特徴を示すベンヌの母天体に至るまで、集積・加熱・衝突進化を統一的に説明する進化シナリオを提示する。
[1] Nakamura T. et al. (2023), Science 379, 787.
[2] Iizuka, T. et al. (2025) Nature, 450, 525–528.
[3] Yokoyama T. et al., 2022, Science 379, 6634.
[4] Mikouchi, T. et al. (2025) 87th Meteoritical Society Meeting (MetSoc), #5211.
[5] Thommes, E. et al. (2001) Astrophysical Ages and Time Scales, ASP Conference Series, Vol. 245.
