講演情報

[U04-01]次世代の持続可能な学術エコシステムへ向けて駆動するための、サイエンスステークホルダーの役割について★招待講演

*村山 泰啓1 (1.京都大学)

キーワード:

オープンサイエンス、科学研究ステークホルダー、出版者、資金配分機関

次世代の科学研究を支えるエコシステムを駆動するためには、研究者のみならず、学協会、研究コミュニティ、出版者、研究資金配分機関、そしてデータリポジトリといった多様なステークホルダーが、それぞれの役割と強みを活かして連携することが不可欠である。特に、近年のグローバルなデータレジリエンス(回復力・強靭性)向上に向けた取り組みに見られるように、データリポジトリの安定性確保に向けたコミュニティ主導のプロジェクトや、助成機関によるインフラ支援の重要性が一層高まっている 。これらのステークホルダーは、単なる研究の外部環境ではなく、科学のあり方を規定する動的なプレイヤーとして機能している。

具体的な影響の一例として、出版者やジャーナルが採用する論文出版ポリシーが挙げられる。現在、ジャーナルが論文査読の条件として根拠データの公開を要求するけーすが増大している。日本政府の即論文OA方針もあいまって、要請にこたえるよう研究機関や大学では研究データの整備と発信が急務となっている。このようなジャーナル編集方針は、研究者にとっての論文執筆方法や研究計画の立案そのものに本質的な影響を及ぼすものである。同様に、研究資金配分機関も研究計画の公募要領を通じて期待される学術成果を明示しており、これを通じて研究活動の方向性を強く規定する効果が生ずる。

また、学協会も参加する研究コミュニティに対して、成果発表の場のあり方、成果発表の傾向を設定するという重要な役割を担っている。開催されるセッションの構成や講演公募の内容は、研究者が自身の研究について活動をどのようにまとめるか、場合によってはどのような研究計画を立てるかに無視できない影響を及ぼす可能性がある。筆者の観測によれば、日頃の研究活動において、研究者は大学や所属機関以外のステークホルダーが持つポリシーやアクションの及ぼす影響に対して、必ずしも自覚的ではないことが多い。しかし、研究成果のレジリエンスや持続可能性を確保するためには、学術分野特有のニーズに応じた適切なガバナンスと、それに基づく協力体制の構築が不可欠である 。

研究実施機関以外のステークホルダーのあり方は、学術研究活動や学術のあり方の本質や研究計画、さらには成果発信の手法に至るまで、多大な影響を及ぼす可能性があるとかんがえられる。したがって、研究者は単に既存の枠組みやルールに従って研究を遂行する受動的な立場に留まるべきではない。科学研究・学術研究を担う科学者として、真に望ましい科学のあり方を実現するために、各ステークホルダーが果たすべき役割やその関係性について改めて問い直すことが重要である。またその重要性に科学者は自覚的であるべきであろう。これには、ステークホルダー間の意思疎通や協力枠組みの構築や、論文、データをはじめとする学術成果物の信頼性と持続可能性を高めること、またその評価基準の策定といった、より広範な議論への主体的関与が含まれることも重要と考えられる。