日本食品科学工学会第73回大会

会頭挨拶

日本食品科学工学会 第73回大会 開催にあたって

 

 

第73回大会会頭   藤井智幸
(東北大学大学院農学研究科)         

 この度,日本食品科学工学会第73回大会を,2026年8月26日から28日までの3日間,杜の都・仙台の東北大学キャンパスにおいて開催する運びとなりました.伝統ある本大会を東北の地でお引き受けできますことは,実行委員会一同,大変光栄に存ずるとともに,会員の皆様の御参加を心よりお待ち申し上げます.

 ここ仙台の地には,今から四百余年前,未知なる世界へと勇敢に漕ぎ出した先駆者の記憶が刻まれています.伊達政宗公の命を受け,慶長遣欧使節として木造船「サン・ファン・バウティスタ号」で大海原に挑んだ支倉常長です.彼は遥か彼方の地・ローマを目指し,太平洋と大西洋を越えていきました.当時の人々にとって,その航海は想像を絶する困難を伴うものであったと思いますが,常長の胸中には,未だ見ぬ知見を希求する不屈の志があったに違いありません.

 この常長の壮挙は,私たちが日々向き合っている学問の姿そのものであります.科学の探究とは,既知の岸辺を離れ,正解のない「未知なる学海(がっかい)」へと出帆することに他なりません.本大会の会場となる東北大学は,百二十余年の歴史の中で「研究第一主義」「門戸開放」「実学尊重」の三つの理念を礎に発展してまいりました.

 真理の深淵を覗き込み,世界最高水準の知を創出する「研究第一主義」.人種や性別,さらには学問の境界さえも超えて広く知己を求める「門戸開放」.そして,得られた知見を社会の幸福のために還元する「実学尊重」.これらの理念は,かつて常長が未知の海を渡り,異国の文化を柔軟に取り入れ,それを国の繁栄に繋げようとした精神とも深く共鳴するものです.

 現代の食品科学は,地球規模の食糧問題や健康長寿の実現,持続可能な社会の構築という,まさに荒波のような課題に直面しています.常長が羅針盤を頼りに未知の地を目指したように,私たちもまた,東北大学が培ってきた自由闊達な気風のもと,多様な背景を持つ研究者が一堂に会し,既存の枠組みにとらわれない議論を戦わせることで,食品科学の新たな航路を切り拓きたいと考えております.特に,次世代を担う若手研究者の皆様には,常長がかつて抱いたような瑞々しい好奇心と挑戦心をもって,この「学海」の荒波を恐れずに突き進んでいただきたいと願っております.その挑戦こそが,未来の食卓を豊かにする確かな一歩となるはずです.

 学術的な研鑽はもちろんのこと,宮城・仙台は豊かな山海の幸に恵まれる土地柄でもあります.学会を機に,常長も愛したであろう宮城の豊かな食文化に触れ,会員相互の親睦を深めていただければ幸いです.杜の都・仙台での再会が,皆様にとって輝かしい未来への「出帆」の場となることを,実行委員会一同,心より願っております.