講演情報
[S1-03]「後ろに倒れるのが怖い」と訴える重度感覚障害を呈する脊髄腫瘍患者
− 恐怖心・努力感の改善に向けた介入 −
*佐藤 友香1、白石 圭佑2、後藤 圭介3、糸井 覚4、若林 秀隆5 (1. 東京女子医科大学病院 リハビリテーション部、2. 登戸内科・脳神経クリニック リハビリテーション科、3. 国際医療福祉大学 成田保健医療学部 理学療法学科、4. 東京女子医科大学病院 血液内科、5. 東京女子医科大学病院 リハビリテーション科)
【はじめに】
急性Bリンパ芽球性白血病は、中枢神経系に浸潤しやすい疾患である。本症例はTh4-6の脊髄腫瘍により、Th4以下の重度感覚障害と脊髄性運動失調を呈し、起立動作にて恐怖感・努力感を訴えていた。骨盤の動きに関するメタファを手がかりに骨盤前後傾運動を学習したことで最終的に改善に至った。
【症例経過】
50代男性。1年4ヶ月前より両下肢感覚障害が出現。初回評価は入院翌日であり、MMTは両上下肢・体幹4~5、Th4以下の表在・深部覚が鈍麻し、ASIAで触覚・ピン刺激は112点中75点、振動覚脱失、位置覚に10cmのずれを認め、ロンベルグ徴候は陽性であった。起立動作の伸展相で脊柱起立筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋の緊張が亢進し、動作の努力性と重心の前方偏位を認めていた。「後ろに倒れるのが怖い」と訴え、重心が前方に偏位し、筋緊張亢進を助長した。
【病態解釈】
脊髄腫瘍による感覚情報の伝達障害で、筋紡錘・ゴルジ腱器官のフィードバックが不足し、筋出力の調整が困難になり、背部筋の過緊張と重心の前方偏位を助長したと推察される。また、後方への転倒を恐れ、関節を過度に固定し姿勢保持を図っていた。この結果、過剰な努力感や筋疲労感が増大したと考える。
【治療アプローチ】
骨盤前後傾運動の学習により、体幹と骨盤で運動の分離を図ることで重心の前方偏位と背部の過緊張を制御できる可能性があると考えた。背臥位・閉眼で下腹部にて両手で三角形を作り、骨盤を前後傾させることでビー玉がどの方向に転がるのかイメージさせた。その知覚仮説および解答を求め、その後自動運動で実施した。2週間導入し骨盤の傾きと重心移動を視覚・触覚的に理解させた。
【結果】
最終評価は初回評価の2ヶ月後に実施。感覚機能に大きな変化はなかったが、骨盤前後傾運動の理解により起立動作時の重心前方偏位と過剰な筋緊張が抑制され、「怖くない」「前より疲れない」という言語記述が得られた。
【考察】
ビー玉メタファを用いて骨盤前後傾運動を学習し、重心の前方偏位と背部の筋緊張を制御できたと考える。これらの介入は脊髄性運動失調患者の起立動作時の努力感を軽減する介入の一つになる可能性がある。
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき、症例報告の目的・公開方法・協力と取り消しの自由・人権の尊重および個人情報の保護について説明し、発表への同意を得た。
急性Bリンパ芽球性白血病は、中枢神経系に浸潤しやすい疾患である。本症例はTh4-6の脊髄腫瘍により、Th4以下の重度感覚障害と脊髄性運動失調を呈し、起立動作にて恐怖感・努力感を訴えていた。骨盤の動きに関するメタファを手がかりに骨盤前後傾運動を学習したことで最終的に改善に至った。
【症例経過】
50代男性。1年4ヶ月前より両下肢感覚障害が出現。初回評価は入院翌日であり、MMTは両上下肢・体幹4~5、Th4以下の表在・深部覚が鈍麻し、ASIAで触覚・ピン刺激は112点中75点、振動覚脱失、位置覚に10cmのずれを認め、ロンベルグ徴候は陽性であった。起立動作の伸展相で脊柱起立筋・大腿四頭筋・下腿三頭筋の緊張が亢進し、動作の努力性と重心の前方偏位を認めていた。「後ろに倒れるのが怖い」と訴え、重心が前方に偏位し、筋緊張亢進を助長した。
【病態解釈】
脊髄腫瘍による感覚情報の伝達障害で、筋紡錘・ゴルジ腱器官のフィードバックが不足し、筋出力の調整が困難になり、背部筋の過緊張と重心の前方偏位を助長したと推察される。また、後方への転倒を恐れ、関節を過度に固定し姿勢保持を図っていた。この結果、過剰な努力感や筋疲労感が増大したと考える。
【治療アプローチ】
骨盤前後傾運動の学習により、体幹と骨盤で運動の分離を図ることで重心の前方偏位と背部の過緊張を制御できる可能性があると考えた。背臥位・閉眼で下腹部にて両手で三角形を作り、骨盤を前後傾させることでビー玉がどの方向に転がるのかイメージさせた。その知覚仮説および解答を求め、その後自動運動で実施した。2週間導入し骨盤の傾きと重心移動を視覚・触覚的に理解させた。
【結果】
最終評価は初回評価の2ヶ月後に実施。感覚機能に大きな変化はなかったが、骨盤前後傾運動の理解により起立動作時の重心前方偏位と過剰な筋緊張が抑制され、「怖くない」「前より疲れない」という言語記述が得られた。
【考察】
ビー玉メタファを用いて骨盤前後傾運動を学習し、重心の前方偏位と背部の筋緊張を制御できたと考える。これらの介入は脊髄性運動失調患者の起立動作時の努力感を軽減する介入の一つになる可能性がある。
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき、症例報告の目的・公開方法・協力と取り消しの自由・人権の尊重および個人情報の保護について説明し、発表への同意を得た。
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