講演情報

[S2-02]認識運動課題の実施により失調症状の軽減を認めた小脳梗塞症例

*南場 みずき1、松村 智宏1,2、沖田 かおる1 (1. 愛宕病院 リハビリテーション部、2. 愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)
【はじめに】
症例は右聴神経腫瘍の術後に小脳梗塞を発症し,失調症状を呈していた.予測と実際の動作の誤差学習を促すとともに上肢操作時の手指の力量調整を行った.介入は1週間と短期であったが失調症状の軽減を認めたため以下に報告する.

【症例紹介】
症例は右聴神経腫瘍の術後11日目のMRIにて小脳梗塞を認めた50歳台の女性である.術後14日目の評価ではBRSは右上肢Ⅴ,手指Ⅵであった.右上肢は他動運動の際に筋緊張亢進を認め,肩・肘関節の位置覚は軽度鈍麻であった.STEFは右40/100点,SARAは11/40点,Comprehensive Coordination Scale(CCS)は上肢scoreが43/54点,上肢の協調性運動機能評価(Trace Coder:TC)では筆圧が強くズレを認めていた.以上の各評価より,測定障害と失調症状が観察された.また,把持力計測装置(テック技販社製)より感覚に基づいた力量調整や予測制御が困難であった.

【病態解釈および介入方法】
症例は予測制御が困難なことに加え深部感覚障害により感覚フィードバック情報が伝達されないため失調症状が出現し,上肢・手指の筋緊張が高くなっていると考えた.課題は右上肢他動運動にて運動距離と各関節の位置関係の認識を促した.また,リーチ動作練習では閉眼にて運動距離に注意を向け行い,その後,運動イメージと実際の動作との差異を視覚で確認した.段階付けとして,机上から空間課題へと変更した.また,自動運動で実施する際は母指と示指でスポンジをつまみ「スポンジをつぶさないように」と手指の力量調整にも注意を向けながら行った.

【結果】
認識運動課題では予測と実際の動作との差異が減少し,介入1週間後には運動距離や各関節の位置関係の認識の向上を認めた.STEFは61点,CCSは上肢scoreが47/54点となり,TCでは筆圧・ズレの面積ともに数値が減少し,測定障害と失調症状の軽減を認めた.

【考察】
運動イメージを用いて運動の予測と実際の動作の修正を繰り返し行ったことで正しい感覚フィードバック情報の認識が可能となり,上肢の操作性が向上したと考える.また,測定障害と失調症状が軽減したことから予測制御能力が向上したと推察する.

【倫理的配慮(説明と同意)】
発表に際して同意を得て個人情報の匿名性に留意した.

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